金融市場NOW

米国による司令官殺害にイラン報復攻撃

2020年01月09日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

トランプ大統領はイランの報復攻撃を受け自制的な発言

  • 米国はイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害。報復攻撃の姿勢を示していたイランは米空軍基地へミサイルを発射。米国からの反撃も想定され予断を許さない状況。
  • 各市場の反応は一時的なものに留まるも、イラン情勢次第では大幅に変動する可能性も。

イラン革命防衛隊の英雄とされる司令官を殺害

米国は3日イラク・バグダッドにおいてイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害しました。米国政府は差し迫った危機を食い止めることが目的であったことを説明しました。事件直後に報復の姿勢を示していたイランは8日イラク領内の米軍・イラク軍共有空軍基地へミサイルを発射しました。イランによる最初の報復攻撃と見られます。イランはイスラエルなどへの攻撃の可能性を示唆しており、予断を許さない状況となっています。

大統領支持率はわずかに上昇

今回の殺害計画実行では慣例とされている米国議会情報委員会有力メンバーなどへ事前通達がなかったことや、トランプ大統領が今後イラン領内の文化的遺産を含む52施設への攻撃を示唆していることなどへ批判の声が上がっています。文化的遺産への攻撃は1954年ハーグ条約に定められた「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」に抵触するとの声もあります。また、今秋の大統領選の民主党有力候補ウォーレン氏からは、弾劾訴追されているトランプ大領領が世論の関心をそらすために計画を実行した疑いがあると指摘されています。一方でトランプ大統領への支持率はやや上昇傾向にあります。支持率上昇の理由として共和党支持者を中心に、オバマ前政権時の対イラン融和政策への不満が蓄積していたのではないかとの見方があります。

市場の反応

司令官殺害に対し、イランが報復攻撃を示唆したことから3日の米国株式はリスク回避姿勢が広がり下落しました。米国債券は金利が低下(価格は上昇)しました。為替も相対的に安全資産と見なされている円が買われ、円高/ドル安が進みました。翌営業日には、各市場とも反転しており、反応は一時的なものに留まっています。イランのミサイル攻撃があった8日の米国株式はトランプ大統領の自制的な発言を受けて上昇しました(グラフ1)。過去の中東における有事において株価は上昇もしくは反応が限定的であった(グラフ2)ことや、本格的な戦争状態へ突入する可能性は低いとの想定から、今後の株価への影響は一時的なものに留まるとの見方があります。一方で、昨年20%を超える上昇となり、10月以降上げ足を速めた米国株式は利益確定の売りに押されやすい状況にあると見られることから、今後のイラン情勢次第では大幅に下落する可能性も孕んでおり、当面は神経質な相場展開が続くものと思われます。トランプ大統領は一旦自制的な発言を行ったものの、司令官殺害の際には米国資産へ報復攻撃があればイラン施設を攻撃するとも語っており、当面中東情勢に注目が集まるものと思われます。

グラフ1:米国株と為替の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:過去の中東有事発生後の米国株推移

  • ※湾岸戦争はイラク空爆時(1991年1月17日)、シリア空爆は空爆時(2018年4月13日)のNYダウを100として指数化
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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