金融市場NOW

世界的な金利低下が継続中

2019年08月20日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

行き過ぎとも言われる金利低下には要注意

  • 2018年半ばまで引き締め傾向であった金融政策は2019年に入り、一転して緩和傾向に。
  • 主要国国債の金利低下に伴い、イタリアやギリシャ等の相対的に金利水準の高い国債へ資金が流入。
  • 米国とギリシャの10年国債金利は一時ほぼ同水準に(足元では米国金利が急低下)。
  • 米国の10年・3ヵ月国債の逆イールド化が進む。

世界的に金融緩和が進む

グラフ1:各国の10年国債金利の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

世界的な金利低下が継続中です【グラフ1】。2018年半ばまでは金融引き締め傾向であり、金利は上昇していました。2018年後半に米中貿易摩擦問題が台頭し、世界景気減速懸念が生じてきてから、様相が一変したものと思われます。2019年に入り、米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ休止を宣言した後、市場では利下げを織り込む動きが進み、7月30~31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではおよそ10年半ぶりに利下げが実施されました。欧州ではECB(欧州中央銀行)がフォワードガイダンス(将来の金融政策を約束する手法)を見直し、2020年半ばまで現在の低金利またはそれを下回る金利を維持することを宣言しており、年内の金融緩和期待が高まりつつあります。米欧が金融緩和姿勢を示唆していることから、当面の間、金利は世界的に低位で推移するものと思われます。

イールドハンティングの動きが目立つ

世界的な金利低下が進む中、債券投資家によるイールドハンティング(少しでも高い利回りを求めて、世界中の投資先を探すこと)が活発化しているものと推測されます。欧州ではドイツ10年国債金利は政策金利(-0.4%)を下回る水準まで低下しています。財政赤字問題に揺れるイタリアの10年国債金利は一時2016年10月以来となる1.5%を割り込む水準まで低下しました。また、2012年3月には37%を超えていたギリシャ10年国債は2.0%近辺まで金利が低下しています。これまで高金利国の代名詞と言われていたオーストラリアの10年国債は史上最低水準である1.0%を割り込むまで金利が低下しています。

米国とギリシャの10年国債金利がほぼ同水準に

グラフ2:アメリカ・ギリシャの10年国債金利

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

足元では、米国金利の低下が目立つものの、米国とギリシャの10年国債金利はいずれも2.0%近辺での推移となっており(7月末時点) 【グラフ2】、イールドハンティングが強まっているものとみられます。イールドハンティングが行き過ぎた局面では、その反動から相場が大きく下落することがあります。実際に2005年~2007年にかけて、信用格付けに大きな差がある米国とギリシャの国債が同水準になった後、2008年にリーマン・ショックが発生しており、米国・ギリシャの金利水準には警戒が必要との声が市場では聞かれます。今回は、当時と比べて経済・金融環境が異なっており、金融危機の可能性は低いとの見方もありますが、過去の出来事を教訓として、行き過ぎとも言われる金利低下に注意する必要があるものと思われます。

米国の逆イールドにも要注意

米国では、10年国債金利と3ヵ月国債金利が逆転しています。一般的に、長期金利が短期金利を下回ること(逆イールド)は景気後退の前兆と言われており、今後の米国の景気動向や金融政策に注目が集まるものと考えられます。

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