金融市場NOW

日本の稼ぎ頭 貿易収支から所得収支へ

2017年05月24日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

日本企業は海外での稼ぎをそのまま海外の再投資に振り向ける動き

  • 2016年度の経常黒字額がリーマン・ショック前に迫る水準に回復。9年ぶりに20兆円の大台へ。
  • 増加しているのは日本企業の直接投資から得る利益であり、2007年度の2.1倍にまで増加。
  • 外需好調により経常黒字は緩やかに拡大か。一方、米保護主義による円高・ドル安の進行懸念も。

日本の稼ぐ構図が大きく変わりつつあるようです。

海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支の黒字額は2016年度にリーマン・ショック前に迫る水準を回復しました(グラフ1)。貿易黒字は当時の4割の水準に低下する一方で、企業が外国の株式などへの投資から得る所得が増えています。ただ、企業は海外で得た稼ぎをそのまま海外に再投資する傾向を強めており、企業などの稼ぎが国内の雇用や税収に結びつきづらくなっています。

2016年度の経常黒字額は2015年度比13.1%増の20兆1,990億円となり、リーマン・ショック前の2007年度以来、9年ぶりに20兆円の大台を回復しました。増加しているのは日本企業が海外企業に経営参加したり支配するために株式などを保有する直接投資から得る利益であり、2016年度は7兆4,573億円と2007年度の2.1倍にまで高まりました。リーマン・ショック後の急激な円高を背景に、企業は海外で稼いだお金を海外での再投資に振り向ける動きを強めました。直接投資のうち、再投資から得られた収益は2016年度に3兆9,631億円と過去最高になり、2007年度の2.5倍に増加しました。

一方、貿易黒字は減っています。貿易黒字額は2007年には13兆6,862億円と経常黒字の6割近くを占めていましたが、2016年度には3割弱にまで減少しました(グラフ2)。企業の海外への生産拠点移転により輸出が減少したことが大きな要因とみられます。

今後は海外経済の情勢に左右されることになりそうです。引き続き外需が好調さを保つことができれば、経常黒字は緩やかに拡大するという見方はあるものの、トランプ米政権が進める保護主義政策のなかで円高・ドル安が進行すれば黒字縮小の方向への圧力が強まるとの懸念もあるようです。

グラフ1:経常黒字額はリーマン・ショック前に迫る水準へ

経常黒字額はリーマン・ショック前に迫る水準へ
出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:日本の稼ぐ構造に変化

日本の稼ぐ構造に変化
出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

参考レポート:金融市場NOW 2017年2月14日号「知財収入 日本の新たな稼ぐ力」

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