吉野貴晶のクオンツトピックス

No.15
POS小売指数による消費税増税後のマクロ消費予測

2020年02月28日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

POSデータで見るマクロ消費(消費税増税後の動きを予測する)

  • AI(人工知能)やオルタナティブデータ等と投資手法の関係性を紹介
  • 消費税増税後のマクロ消費の動きに着目してみる

今回は、オルタナティブデータの中から、POSデータに焦点を当ててみたいと思います。

以前のレポート(No.13 POSデータ(オルタナティブデータ)によるマクロ消費の予測)において、POSデータを利用して、小売業販売額指数を予測できるかを検証しました。今回は、枠組みはそのままに、消費税増税後による駆け込みの反動減局面にスポットを当ててみたいと思います。

図1:POS小売指数作成の枠組み

  • ※株式会社True Data:全国のスーパーマーケット等の消費者購買情報を統計化した日本最大級のデータベースを提供

POS小売指数は小売業販売額をトラックしているか?

1. POS小売指数の推移

さて、POS小売指数の直近結果を見てみましょう。2020年2月上旬における、POSデータから作成されるPOS小売指数と小売業販売額指数(前年比)を並べてみました。両指数の動き方はある程度類似しているといえます(相関係数は0.85)。

図2:その時わかるベース(2020/2月上旬時点)におけるPOS小売指数と小売業販売額指数の推移

  • ※注:2015年3月の急減および2015年4月の急増について。その前年2014年4月に消費税増税(5%→8%)があり、駆け込み及び反動減が発生。前年比で見た場合、その翌年の同時期に影響を与える。

図3:予測における必要データとタイミング

消費税増税後の消費の動きを予測できるか?

2. 消費税増税後におけるマクロ消費の駆け込みからの反動減

さて、直近の消費税増税時における、POS小売指数と小売業販売額指数の動きを見てみたいと思います。バックテストベース(その時わかるベース)の分析になります(枠組みは以前のレポートを参照)。図4の1は、消費税増税実施後の2019年10月分消費がどのようになるかを予測した結果です。予測時には、10月分の小売業販売額指数実績は未公表ですが、比較のために表示しています。駆け込みが発生した9月に対して、10月には落ち込みが発生することを予測しており、実態も前年比マイナスでした。

一方、駆け込みがあったということは、ある程度の反動減は致し方ないといえます。駆け込みと反動減の幅のほかに、マクロ予想をするうえで重要な点は、反動減を経て、その後の消費のペースがどうなるか(腰折れないか)です。反動減の翌月である11月分を予測した結果が図4の2です。POS小売指数は、反動減の影響は緩和されるが、大幅な回復には至らないことを予測しました。

このように、POS小売指数を用いることで、マクロ指標の発表よりも早く、予測を行うことができます。

図4: 消費税増税による反動減と戻り局面のPOS小売指数予測

その時わかるベース(2019/11中旬時点)における2019年10月POS小売指数の予測と実績

消費税増税(8%→10%)の反動減予測

その時わかるベース(2019/12中旬時点)における2019年11月POS小売指数の予測と実績

反動減からの戻り(マイナス幅の緩和)の予測

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