アナリストの眼

リコール問題から再認識した「謙虚さ」(2)

掲載日:2010年09月22日

アナリスト

投資調査室 横田 茂之

これらのような「人の記憶に対する不正確性」は、行動ファイナンスにおける一つの基本構造である、限定合理性を構成する一つの重要な要素となっています。限定合理性とは、人は、様々な制約(時間的制約、情報処理能力、感情、人間の自信過剰な側面など)により、限られた合理性しか持ち得ないため、経済主体もまた限定的な合理性しか持ち得ないことです (ハーバート・サイモン;1955)。特に後知恵は記憶に対する不正確性以外に自信過剰(自分を正当化したい)が影響していると考えられます。

我々の投資意思決定の際にも、過去の記憶を参考にする事があります。しかしながら、記憶というものは想起段階において都合の良いように装飾されやすいということを前提とすると、不正確であるかもしれない記憶に頼った意思決定は危険を伴います。我々は、こうしたことを出来るだけ排除するために、失敗事例をストックすることで、より客観的な意思決定を心掛けてます(勿論成功事例もストックしますが)。

さて、2011年3月期の第一四半期の決算発表も終わり、これらの事を我々アナリストに照らし合わせて考えるとどうでしょうか。そういった側面(結果を知った上で、サプライズは無かった、想定どおりとコメントしてしまうこと)が無いとは言い切れません。前述のような、出来るだけ客観的な意思決定を行える仕組み作りを今後とも継続することに加え、なんと言っても我々人間には限界があり、弱いという性質を補うためには、出来るだけ「謙虚に」、「萎縮せず」市場と対峙していきたいと思います。

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