アナリストの眼
ものづくり改革(2)
掲載日:2010年08月23日
- アナリスト
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投資調査室 川村 高司
ではどうして日本は動けなかったのでしょうか。日本は第一次石油ショック以降、重要度の高い石油を除けば民間に資源の権益獲得を任せてきました。2000年以降、資源メジャーや中国の台頭により資源価格が高騰。これは国や民間企業にとって想像を超えるものだったと推察されます。日本と中国では経済成長率に格差があり数量確保という点で危機感に大きな違いがあったのではないでしょうか。
今、この資源価格の高騰によってものづくりの付加価値が川下から川上へ移ろうとしているのです。ただここで日本が焦って戦略なしに参戦しても資源争奪戦を激化させるだけで地球トータルとしての解決には至りません。
権益獲得も重要ですが、日本の立ち位置からすると日本が得意とする資源の有効活用、リサイクル事業に期待したいです。具体的には低品位の鉱石から効率的に金属を取り出す手法の開発、代替材料の活用(例えば、鋼材の原料として原料炭⇒一般炭)、デジタル家電や携帯電話などから有用なメタルを回収・リサイクルする事業などです。こうした施策を経営の柱の一つに位置づける企業が増えており、中には世界トップクラスのノウハウを持つ企業が日本には数社存在します。このような技術を世界に還元すれば、日本の国益となって戻ってくると考えます。
このように考えると、ものづくりのあり方を見直すことが求められます。これまで重視してきた消費者志向のみを意識したものづくりから、原料調達から省資源、省エネをもっと意識したものづくりへの改革です。省資源を進めるとものづくりの設計が変わり、場合によっては消費者の意識改革も必要になるでしょう。更に税恩典の付与に加えどれだけ省資源、省エネが図れたかを製品に明示するなど、消費者の協力が得られやすい仕組みづくりが望まれます。私は消費者の一人として賢く買い物をしたいと思っています。
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