アナリストの眼

日本の食品会社の海外事業展開

掲載日:2010年07月27日

アナリスト

投資調査室 齊藤 毅人

最近海外へ事業展開する食品会社が増えている。人口減少する国内市場では将来が見込めないため、独資(100%自己資本)で進出するケースや合弁(地元企業と折半出資)や業務提携で進出するケースが多い。また、進出を検討中の会社を含めれば、今から3年~5年以内に我々の日常よく見かけるメーカーはほとんど何らかの形で海外進出を果たしている可能性すらある。

人口減少と少子高齢化の加速は食品市場規模縮小を加速させかねない

2005年に日本の総人口はピークを打ち、戦後初めて減少に転じたといわれている。前年の2004年国内加工食品市場規模は、21兆6478億円。2009年の同市場規模は、21兆4,764億円。2004年と比べると1714億円(0.8%減)わずかながら市場が縮小しはじめていることがわかる。

要因は、デフレ環境下の単価下落など人口減少以外の要因もあると思われるが、食品の市場規模は、1人当りの消費量と総人口に比例するため、先進国の一人当たりの食品消費量は安定しており、長期的な人口が減少に合わせ、国内食品市場全体が縮小していると考えるほうが自然と思われる。

加えて、現在進行中の少子化は将来の国内市場を支える成人人口減少につながり、高齢化は加齢とともに一人当たりの消費量が落ちるため、人口減少に加え、市場縮小はその分速くなるだろう。そのため、各分野の食品トップメーカーを中心に海外進出を行うまたは検討する食品メーカーが増えている。

海外進出は意外に歴史が古い

実は、日本の食品会社は、意外にも海外進出の歴史は古く、既に大正時代に中国・韓国・台湾に進出し、現在までに百数十カ国に進出先を広げ、海外の取引先を持つ会社がある。当時の事情と現在では進出した背景が異なるが、早くから海外事業を重視した経営者がいたことは事実である。当時の経営者の一般的な考え方は、現在のように日本国内の成長に限界を感じ、海外に進出するという現在相対的に多く見られるようになった消極的な考え方ではなく、「世界の人々の食を豊かにし、不栄養で命を落とすことがないよう健康増進させ維持させたい。」というむしろ積極的な経営者としての高い理想の実現を目指していた。

現代の有望な海外進出先は人口増大が見込まれ、1人あたりGDPが増える新興国中心

海外進出を考える際に、先進国ではなく、人口が増加し、一人当たりのGDP成長が見込まれる新興国への進出が有望である。中でも中国は人口13億3,861万人と日本の総人口1億2,707万人と10倍近い人口を抱える。現在中国の発展段階は、昭和30年代当時の日本とよく似ている経済状況といわれている。食料事情からも、同じようなことがいえたとえば、日本人の昭和39年の牛乳および乳製品の消費量は年間1人当り35.4kgだが平成18年現在の同消費量は93.3kg。現在中国人の1人当りの牛乳および乳製品の消費量は25kg程度と推定される。

今後日本人並みに牛乳および乳製品を消費する習慣が定着すれば、現在より市場規模が飛躍的に拡大することは容易に想像できる。

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