アナリストの眼
移動の速度と歴史の速度(2)
掲載日:2009年11月20日
- アナリスト
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投資調査室 伊藤 琢
株価という意味でもこのことがよく当てはまります。近年は新しい情報が価格へ織り込まれるスピードは極めて早くなっています。企業の決算やニュースリリースなどは、発表した瞬間から世界中に伝わり、株価として織り込まれるようになりました。つまり、当然のことではありますが、投資を行う場合は公開された情報を見知ってからでは妙味はなく、予めそのようなニュースフローが出ることを予見していなければならないと言えます。
アナリストの業務は、企業の将来の業績を予想した上で本質的な企業価値を分析し、現在の市場価格との認識ギャップを見つけることにありますが、そういった意味では、幸いにも時代は変われども本質的な仕事の意義には変化がないように思います。資本市場は、企業の本質的な価値を見つめた投資を行う者に、最終的には勝利の女神が微笑むように出来ています。そして、本質的な価値を見つめるためには、データを収集し予想・分析するだけではなく、経営者と将来について深いディスカッションをしたり、現場に直接足を運び技術や競争力について学んだりもしなくてはなりません。刻々と変わり行く時代の中で、明日のために種まきをしている企業の中にこそ、ダイヤモンドの原石が潜んでいます。それらは整ったデータで客観的に認識できるものは少なく、定性的な情報でしか理解できないことも多いため、直接訪問をして取材をすることの意味が増してきます。
冒頭へ戻りますが、企業の現地工場の取材から帰る新幹線の中で、このようなことを考えていました。その企業の新技術は未だ世の脚光を浴びていませんが、私は加速する時代のニーズによって、思いの他早くに彼らの技術は顕在化し、企業価値が上昇するのではないかと考えています。投資は常にリスクを伴いますが、自分の信じるような未来がやって来て、市場で企業価値が見直された時の喜びはアナリストをしていて最も嬉しい時のひとつです。今回取材した企業も、きっと近い将来にそうなるだろうと、期待に胸を膨らませて帰路に着きました。
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