アナリストの眼

リソースの最適配分に注目(2)

掲載日:2009年04月24日

アナリスト

投資調査室 黒木 文明

電力会社が電力使用のピークに合わせて発電容量を確保しているのはよく知られていますが、情報システムの場合も同じで、システムを安定的に稼動させるためには最大負荷に対して余裕を持ったシステムリソースが必要です。バラバラにシステムが存在していると、運用管理が複雑になるだけでなく、各システムでの余裕部分が累積されてムダも大きくなります。逆に、統合・集約することで、運用管理に必要なコスト(人的リソース)を節約できますし、負荷分散を図りながらシステムリソースを最適に配分することも可能になります。

もちろん、個社レベルよりも企業グループで、更には企業グループを超えてリソース集約する方が、その効果は大きくなります。最終的には、システムを所有するのは特定の数社だけになるとの意見は極論としても、情報システムの場合、地理的制約を受けませんし、グローバルで利用されれば時差によって利用負荷も分散されますので、共同利用との相性は極めてよいのです(例えば、カーシェアリングと比べてみて下さい)。クラウドコンピューティングの利用が広く浸透する可能性は高いと思われます。

ユーザのシステム予算こそが収入源の事業者にとって、システム経費削減につながる提案をすることは厳しい選択ではあります。ただ、情報の収集・分析なくして、リソースの最適配分はできませんから、今後もシステムが活躍する場面は広がると考えています。一例ですが、グリーンニューディールでも取り上げられた「スマートグリッド」と呼ばれる次世代送電網では、ITを駆使して電力需要の負荷分散を図るなど、需要と供給の双方を最適に制御することにより、発電効率を高めるそうです。既存ビジネスへの影響を懸念して新たな展開に二の足を踏むのではなく、先を見据えて経営リソースをどこに重点配賦するのか、事業者の取組みも注目されます。

経営リソースの最適配分で難局を乗り切った企業には、次の景気回復局面が大いに楽しみです。また、ユーザニーズに合致した提案ができる企業には、厳しい環境下でも新たな成長の糧を見出しうるものとして期待されます。 私たちアナリストにとって、企業の決算発表・株主総会が集中する5・6月は業務負荷が集中する時期にあたります。特に今年度は、事業ポートフォリオの再構築など大きな方向性が示される可能性も高く、リソース配分を間違えることのないよう、有望銘柄の選別に注力したいと考えています。

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