アナリストの眼
自動車産業に緊急支援
掲載日:2009年02月25日
- アナリスト
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投資調査室 川村 高司
米国発の金融危機が各国の金融機関を直撃し、自動車産業に大きな影響を及ぼしています。各国の新車販売を見ると米国から始まった減少は、欧州、日本、新興国へ波及し、今後においては販売減少がどれだけ深く長いものとなるか予測が難しい状況です。オイルショックや90年以降のバブル崩壊を凌ぐ需要の急減速。回復のメドが立たない来期は大手から中堅まで多くのメーカーが赤字となる見通しです。
日本の自動車産業といえば、国際的にも競争力があり、雇用機会を創出し成長基盤を確立してきました。その重要な産業が現在、危機的状況にあります。現在の需要の急減速は、マネジメントがコントロールできる範囲を超えており、自動車産業を支援することが強く望まれます。
仮に、販売台数が前年比で-30%、-40%と減少が続けば深刻な問題となります。特に問題となる点は、資金繰り、雇用、そして次世代技術投資の抑制であると考えます。自動車メーカーは川上の部品メーカーから川下のディーラーの経営状況に細心の注意を払っています。例えばクルマが急に売れなくなるとディーラーからの資金回収が減少し、その一方でサプライヤーへの支払いは決済期間が長いため、現在と比べて生産水準の高い時の支払いとなり資金繰りに窮します。また原価の70~80%を占める部品は重階層をなす数百社のサプライヤーより調達しており、一社が経営破綻すれば連鎖倒産もあり得ます。その瞬間にクルマの生産が止まり大混乱となります。すなわち自動車メーカー個別の財務面は余裕があるようにみえますが、サプライチェーンを含めた自動車産業全体を見渡すと実は全く楽観できません。
一般企業が政府の融資制度や産業再生法を活用する動きがあるようですが、自動車産業にとっても決して対岸の火事ではありません。支援は早期の対応が望まれます。自己資本のき損は企業の格付けに影響することもあり、ローンの利用が多い自動車販売にマイナス影響を及ぼします。また資金繰りへの対応に迫られ、スキルの蓄積がある労働力や次世代投資が過度の犠牲を強いられることも懸念されます。
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