アナリストの眼
石油危機・大恐慌に学ぶ(2)
掲載日:2009年01月23日
- アナリスト
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投資調査室 宮林 宏
次に、世界大恐慌時の企業行動(製造業)について考えてみます。恐慌時に市場シェアを伸ばした企業は何社かありますが、例えば、コスト削減以外で、それらに共通して見られる要素として、「在庫管理の徹底(キャッシュフロー管理)」「新商品の投入(積極的なマーケティング)」「事業領域の広さ(多角化)」を挙げる研究もあります。
不況時には需要見合いの生産を行い、過剰在庫を持たないことは基本中の基本です。少し対応は遅れましたが、鉄鋼・製紙等で見られる、足下での大規模な減産対応は最低限必要な企業行動といえます。減産で業界全体の足並みが揃っている点も評価できるでしょう。 また、減産対応だけでは企業体力が消耗するだけなので、需要を喚起する必要もあります。恐慌時ですら消費行動に大きな変化のなかった層もいたようで、それらの層にいかに的を絞ったアプローチができるかが重要です。ただ、これらを同時に行うのは至難の技ですが。
多角化は、経済状況によって、その評価は大きく異なります。事業領域または顧客を特化していると、特定分野の需要変動の影響をより大きく受けます。特に、損益分岐点の高い企業では業績への影響は甚大です。従って、ある程度、事業・顧客が分散していた方が一時的に需要急減のショックが緩和されることは一面の事実です。もちろん、競争力のない事業ばかり持っていても逆効果です。この点からは、一部企業の顧客分散化を目的とした長期的な多角化戦略は評価して良いと思います。
経済状況の激変時に、企業は様々な取り組みを行いますが、企業毎に取り組みの濃淡も違えば、取り組み内容も違います。また、経済状況によって、取り組み内容の評価自体も変わってきます。
上記で示したのは一例ですが、企業を評価する軸は多様です。経済激変時にこそ企業の優劣はよりはっきり出てくるものです。今は、自分なりの視点を持って企業を中長期的に評価するには面白い時期ではないでしょうか。
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