金融市場NOW

バイデン政権 多額の気候変動関連予算を要求

2021年04月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

2022年度裁量的経費として約1.5兆ドルを要求

  • バイデン政権は2022年度予算教書の裁量的経費を公表。ほぼ全ての省庁に気候変動関連予算を要求するなど気候変動を、政策上の重要課題と捉えていることを示した。
  • 気候変動問題への取り組みが重要視される中、トランプ前政権を上回る気候変動予算が承認されると想定。

米国が直面する「4つの危機」

9日バイデン政権は、2022年度(2021年10月~2022年9月)予算教書の裁量的経費(国防費など毎年度議会承認が必要な予算:予算全体の約3割)を公表しました。前年度比+8.4%となる約1.5兆ドルの予算が要求され(表1)、13日議会に提出されました。なお、3月末に公表されたインフラ計画とは別の予算であり、新年度予算として、今後議会で審議されることとなります。

公表された60ページ程度の文書では、冒頭「米国が直面する4つの危機」として、1.パンデミック2.コロナ禍による経済危機3.気候変動による次の世代への危機4.国家・経済間で拡大する不平等が挙げられました。これらを念頭に政策が検討されることが想定されます。中でも、文書中約150か所に「気候」という単語が使用されるなど気候変動問題を、政策上の大きな課題と認識していることがバイデン政権の特徴と思われます。パリ協定(気候変動抑制を目的とした国際協定)を離脱するなど、前政権であまり重要視されていなかった気候変動問題への取り組み方針が大きく転換されたことを示しています。

表1:予算教書(裁量的経費)要求金額

  • 出所:米行政予算局資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
主な省など 金額(億ドル) 前年度比
農務省 278 16.0%
商務省 114 27.7%
国防総省 7,150 1.6%
教育省 1,028 40.8%
エネルギー省 461 10.2%
国土安全保障省 520 0.2%
内務省 174 16.3%
労働省 142 14.0%
国務省及び国際プログラム 635 11.9%
財務省 149 10.6%
その他 4,573
総計 15,224 8.4%

ほぼ全ての省庁に気候変動関連予算

政府所有地や野生生物の管理を行う内務省には、前年度比+16%の予算が要求されています。この予算には、環境汚染の元となる燃料対策や(気候変動が原因とされる)森林火災への対応予算が含まれます。また、環境汚染のない土地や水資源、再生可能エネルギーに関連する雇用創出のため投資を行うと内務長官は方針を示しています(表2)。

内務省以外にも気候変動問題に関する予算は、ほぼ全ての省庁で見積もられています。気候変動の調査や研究への取り組みとして、気候に関する最先端研究プロジェクト機関の設立などの予算10億ドルが計上されています。気候変動への耐性を高め、エネルギー効率のよい施設への改修などにも取り組むことが示されました。

表2:気候変動対応に関連する政策一例

  • 石油・ガスなど化石燃料労働者が、再生可能エネルギー関連事業などへの転職を支援するプログラム
  • 農村地域への再生可能エネルギーによる電力供給網や蓄電設備などの設置資金援助
  • 放置された油田やガス田の閉鎖費用援助や鉱山再生のための資金援助

出所:各種報道等資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

気候変動問題は安全保障上の脅威

2009年に始まったオバマ政権では、気候変動問題に取り組む姿勢が示されました。しかし、二酸化炭素排出を規制する法案などは、民主党が議会で現政権を上回る多数派を握りながらも否決されました。当時は気候変動へ懐疑的な見方や対策によるコスト負担増を理由に反対する声が多くありました。

オバマ政権時から約10年が経ち、今や気候変動は各国の安全保障を揺るがす問題とまで見做されています。気候変動が引き起こすと想定される自然災害は、政治的不安定、難民問題、資源をめぐる紛争に繋がるとされ、政策課題として重要度が増していると見られます。今後与野党の駆け引き等から要求された予算がそのまま承認される可能性は低いと見られるものの、トランプ前政権と比較して多額の気候変動関連予算が承認されるものと思われます。

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