金融市場NOW

国内ワクチン接種開始 英国の取り組みから学ぶ

2021年03月09日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

国内の接種普及には人材の確保が課題

  • 米大手製薬会社ファイザー製のワクチンが国内で初承認され、医療従事者を対象に先行接種が開始。
  • 英国では、政府主導による詳細な接種計画の立案や接種環境の整備、ボランティアを活用した接種が進む。
  • 医療のひっ迫から医療人材確保が困難に。ボランティアの活用など柔軟な対応が求められる。

ワクチン普及による感染抑制が期待される

グラフ1:欧米の新規感染者数は減少傾向にある

  • ※米国および英国の新規感染者数の推移(7日間平均)
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンが2月14日に国内で初承認され、医療従事者を対象に2月17日より接種が始まりました。4月12日より、65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人などに優先して接種をする見込みです。接種と感染抑制の因果関係を示す研究結果はないものの、接種が進む欧米では新規感染者数が減少傾向にあり(グラフ1)、国内の感染抑制に期待が高まります。

政府の接種計画の公表、環境整備が普及を促す

昨年12月3日、世界で初めて新型コロナウイルスワクチンの緊急使用が英国で許可され、8日より接種が開始されました。およそ2ヵ月間で全人口(約6,700万人)の約4分の1にあたるおよそ1,700万人が1回目の接種を終え、先進国の中でも先行して接種が進んでいます。英ワクチン対策本部は、9月中には全ての成人が2度の接種を終えるとの見解を示しています。接種が進む背景には、政府が接種計画を公表し、対象者や人数、完了時期を明確にしていることや(表1)、サッカー場などを接種会場として利用し、国民が接種しやすい環境を早急に整えたことなどが挙げられます。

表1:計画をもとにワクチン接種が進んでいる

  • ※英国の今後のワクチン接種スケジュール(2月15日以降)
  • *優先順位1~4グループ(医療従事者、70歳以上高齢者等)の接種は2月15日までに終了。フェーズ2以降の詳細な計画は、優先グループ1~9の接種完了時に発表予定。
  • 出所:ジェトロの資料をもとにニッセイアセットマネジメントが
時期 優先グループ 対象者
2月中旬~4月末 5 65~69歳(290万人)
6 リスクグループ(65歳未満)(730万人)
7 60~64歳(180万人)
8 55~59歳(240万人)
9 50~54歳(280万人)
フェーズ 2
秋まで 残りの18歳以上の成人(2,100万人)
フェーズ 3
秋以降 詳細未定

接種の普及には人材の確保が課題

グラフ2:国内では医療従事者から順次接種が進む

  • ※新型コロナウイルスワクチンの接種実績(累積人数)
  • *土日祝日の数は、次の平日に合わせて計上
  • 出所:厚生労働省の資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

日本国内の累計接種人数は7万796人(3月8日時点)となりました(グラフ2)。今後の高齢者向け接種では、優先順位の決定など自治体任せであることから、一部自治体で混乱が生じており、計画通りに接種が進まないことも懸念されます。また、一般成人向け接種は6月頃に予定されていますが、世界的なワクチン需要の増加や欧州連合による輸出規制などから国内への供給の遅れや、人材確保が課題とされています。英国では医療資格を持たない“ボランティア”によるワクチン接種が可能となっています。現時点で国内でボランティアの募集はなく、欧米で認められる薬剤師による接種も認められていません。深刻な医療のひっ迫で、多くの医療人材確保は困難であり、国内でもボランティアの活用など柔軟な対応が必要となりそうです。

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