金融市場NOW

トランプ前大統領 2度目の弾劾裁判でも無罪評決

2021年02月18日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

共和党からの有罪票は7票にとどまる

  • 議会襲撃の扇動をめぐるトランプ前大統領の弾劾裁判は共和党から有罪票が投じられたものの無罪評決。
  • 想定よりも短い期間で弾劾裁判が終了し、バイデン新政権は政策運営に専念できる環境が整った。景気回復のペースは想定を上回るとの見方もあり、米国景気の上振れはバイデン政権の公約実現の追い風となる。

共和党は弾劾訴追自体が違憲との立場

グラフ1:弾劾裁判評決結果

  • 出所:各種報道資料等をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

昨年2月の「ウクライナ疑惑を巡る権力乱用」に続き、トランプ前大統領にとっては、自身2度目となる弾劾裁判の評決が、13日米国上院で行われました。陪審員役となる上院議員の投票は、有罪票57:無罪票43となりました。有罪票が出席者の2/3に達しなかったため、無罪評決となりました(グラフ1)。共和党は既に大統領職にないトランプ氏への弾劾訴追は違憲であるとの立場から、共和党議員の17名以上が有罪票を投じる可能性は低いとみられていたことから、想定どおりの結果となりました。

弾劾裁判は数週間にも及ぶと見られましたが、わずか5日間でのスピード評決となりました(表1)。訴追を主導した民主党内にも、裁判の長期化による政策運営への影響を危惧する声が高まったことや、承認が遅れている閣僚の議会承認や1.9兆ドル規模の追加経済対策の成立を急ぎたい意向が、背景にはあったものと思われます。

民主党の目的は、トランプ氏を弾劾裁判で有罪評決とした上で公職追放とし、2024年大統領選への出馬も噂されるトランプ氏の政治的な影響力を削ぐことにあったと思われます。無罪評決後、民主党内にはトランプ氏の今後の動向次第で、弾劾訴追とは別の憲法修正第14条(反逆に同調した公職経験者は公職に就けない)に基づく議決で、政界復帰を阻むべきとの声もあり、議事堂襲撃を巡る責任追及の動きは収束していない模様です。

表1:弾劾裁判までの流れ

  • 出所:各種報道資料等をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
日付 出来事
1月6日 トランプ支持者が議事堂を襲撃(大統領選結果確定日)
1月13日 下院がトランプ氏の弾劾訴追を可決
1月20日 バイデン大統領就任式
1月21日 トランプ氏に弾劾裁判まで2週間の準備期間を与えることで両党合意
1月25日 下院弾劾条項を上院へ送付
2月9日 弾劾裁判開始
退任後の大統領への弾劾は合憲との採決
2月13日 無罪評決

共和党が置かれた複雑な状況

共和党トップのマコネル上院議員は無罪票を投じたものの、議事堂襲撃の責任はトランプ氏にあるとコメントし、(大統領を退任した)一般人として刑事訴追される可能性について言及しました。共和党支持者の中には、トランプ前大統領の支持者層と、暴動を批判する穏健的な支持者層が混在しており、無罪票を投じながらも道義的な責任に言及したマコネル議員の態度は、共和党が置かれている複雑な状況を象徴しているものと思われます。

バイデン政権が政策運営に専念できる環境整う

バイデン大統領は、訴追内容(議事堂襲撃の扇動)自体に両党の異論がなかったことに言及し、弾劾裁判の意義を強調しました。裁判の早期終了により政策運営に専念できる環境が整ったものと思われます。2020年の大統領選における有権者の主な2大関心事はコロナ対策と経済政策でした。バイデン政権は、全国民へのマスク配布の検討や7月末までに6億回(全国民2回接種に相当)のワクチン確保、追加経済対策の早期成立にも取り組む姿勢を示しています。コロナ対策を積極的に進めると同時に本格的な景気回復に向けて経済政策の遂行を進めています。今年前半までに全国民へのワクチン普及を完了させる見通しであり、年後半の本格的な景気回復は想定を上回るペースになるという見方もあります。米国景気の上振れは、バイデン政権の公約実現に“追い風”となるものと思われます。

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