金融市場NOW

2020年米大統領選(12)
バイデン氏 追加経済対策協議で譲歩しない姿勢示す

2020年11月24日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

早期成立を望む声がある中、追加経済対策協議は難航が続くか

  • バイデン氏は政権移行に備え、自身の政策について演説。“コロナ対策”を最優先事項として取り組み、対中通商政策では、制裁関税を手段として利用しない姿勢を示した。
  • 追加経済対策協議へ譲歩しない姿勢を示しているものの、協議の難航は市場に織り込み済み。

マスク着用義務などを称賛

大統領選で当選を確実としているバイデン氏は、16日デラウェア州で、政権移行を睨み自身の政策について演説を行い(表1)、新型コロナウイルス対策を最優先課題として取り組む姿勢を示しました。

表1:バイデン氏の政策・取り組み等

  • 出所:各種報道資料等をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
項目 内容
コロナ対策 コロナウイルス対策チーム立ち上げ。国立アレルギー感染症研究所ファウチ所長と協議開始予定。検査体制の拡充、有給疾病休暇の整備等。
外交政策 トランプ政権が離脱した「パリ協定」に早期に復帰。トランプ政権で脱退表明の世界保健機関も復帰を明言。国際協調路線への回帰姿勢。
税制 トランプ政権下での減税の撤回。企業・富裕層に対する増税。
インフラ政策 輸送・通信・公共事業・住宅の各インフラにエネルギー効率の改善を促し、4年間で2兆ドルを投資し雇用を創出。
医療制度 医療費負担適正化法(オバマケア)を拡大し、公的医療保険加入の選択肢を増やす方針。
移民政策 移民規制の緩和。就労ビザ発給削減やイスラム圏からの入国制限等、トランプ政権の合法移民削減政策を撤廃。不法移民の米国市民権獲得制度を創設。

“コロナ対策”においては、科学者の助言に耳を傾け、マスクの着用や感謝祭(26日)を10人以上で祝うことを避けるよう呼びかけました。また、一部の州で採られている外出制限措置などを、全米に拡大すべきかを問われた際には「州ごとの判断に任せる」との発言に留めたものの、ノースダコタ州のマスク着用義務など(表2)を称賛し、トランプ大統領の感染対策とは違う踏み込んだ予防措置を各州に期待する姿勢を示しました。

表2:一部州の主な“コロナ対策”

  • 出所:外務省資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
州名 措置等
ノースダコタ州 11/14~12/14 屋内ビジネスや屋内の公共の場などにおいて、マスク等着用義務命令を発表。11/16~12/13、一部ビジネス等を制限する命令を発表。
ミネソタ州 バー、娯楽施設などへ営業停止などの措置を11/20から4週間導入。この命令に従わない人には、1,000ドル以下の罰金または90日以下の収監等の罰則規定あり。
ペンシルべニア州 11/20以降、他州などから移動者は、PCR検査陰性を示すか、14日間自主隔離措置。11/18以降、マスク着用の徹底。

追加経済対策協議では譲歩しない姿勢

早期成立が期待される追加経済対策について、バイデン氏は、「(現時点で)共和党に譲歩するつもりはない」と発言しました。民主党は2.2兆ドル、共和党は5,000億ドルと各々が主張する経済対策の額に大きな開きがあります。バイデン氏は、上院の勢力図が固まる来年初のジョージア州での上院議員の決戦投票の結果を踏まえ、次の手を打つと思われ、年内成立は困難と見る向きもあります。

世界を揺さぶってきた通商政策の行方は?

通商政策では、トランプ政権は米国第一主義を掲げ各国に厳しい態度で臨んできました。バイデン氏は、米中貿易摩擦に発展した対中通商政策では、中国に対抗する必要はあるとしながらも、制裁関税などを手段にしない姿勢を示しました。再生可能エネルギーなどの分野に3,000億ドル(約31兆円)を投資し、雇用創出により国内産業の競争力を立て直した上で、新しい通商政策方針を策定するとしました。民主党内でもトランプ政権同様、中国に対して厳しい姿勢を望む声が多いことから、安易な妥協をせずに中国から何らか是正措置などを引き出した上で、制裁関税撤廃に動くことが想定されます。

バイデン政策の市場への影響は?

“コロナ対策”については、科学者の助言に基いた感染対策により、感染拡大の抑制が確認できれば、ワクチン供給期待もあり、投資家のリスク回避姿勢が強まる局面は減っていくと思われます。

追加経済対策は、議会の勢力図が変わらないとの見通しから、協議の難航は、市場に織り込み済みと思われます。しかし一部民主党左派勢力は、少額の経済対策からでも、早急に開始すべきと訴えており、何らかの合意に至った場合は、投資家のリスク選好姿勢が高まるものと想定されます。

通商政策については、対中制裁関税撤廃による貿易量の回復は、世界経済に大きなプラス材料となると見られます。ただし、バイデン政権がトランプ外交との違いを示し、早期に関税撤廃を実現できなければ、市場の期待は大きく萎むことになると思われます。

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