金融市場NOW

外需主導の回復へ(工作機械受注)

2020年10月13日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

経済活動の再開にともない、生産活動や輸出が持ち直し

  • 8月の工作機械受注は、前年同月比23.2%減の680億円となる。減少幅は3ヵ月連続で縮小。
  • 経済活動を早期に再開した中国向けを中心とした外需の回復がけん引。
  • 生産活動を中心とした景気回復が予想されるも、企業の設備投資への慎重姿勢などから回復の足取りは鈍い。

米中貿易摩擦の激化や、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な経済活動の停滞などを受け、これまで低迷が続いていた工作機械※1受注に持ち直しの兆しが見られます。

日本工作機械工業会が9月30日に公表した2020年8月の工作機械受注(確報値)は、前年同月比ー23.2%の680億円となりました。23ヵ月連続で前年同月比でマイナスとなったものの、減少幅は3ヵ月連続で縮小しています(グラフ1-1)。内訳では、内需(国内向け)が同-38.5%、外需(輸出)が同-11.8%となり、外需の回復が目立ちます(グラフ1-2)。経済活動の停滞や感染第二波への懸念などを受け、米国や欧州向けの受注は低迷が続いています。一方、中国向けは、早期に経済活動を再開したことや、政府によるインフラ投資の推進などを受け、6月以降は前年同月比でプラスに転じています。

  • 工作機械は、さまざまな機械製品を加工・製造するのに必要な機械であることから“マザーマシン(母なる機械)”とも呼ばれる。

グラフ1-1:工作機械受注に持ち直しの兆し

  • ※工作機械受注額(合計)と伸び率の推移
  • 出所:日本工作機械工業会のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ1-2:内訳別受注額(前年同月比)

  • ※工作機械受注の内訳別伸び率の推移
  • 出所:日本工作機械工業会のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:景気動向指数は5月を底に改善が続く

  • ※工作機械受注(前年同月比)と景気動向指数(一致指数)の推移
  • 出所:日本工作機械工業会、内閣府のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

工作機械の受注動向は、各産業の設備投資の動向をいち早く表すことから、景気の先行きを見る上で重要とされています。一般に、工作機械受注は景気の現況を表す景気動向指数(一致指数)に先行すると言われます(グラフ2)。コロナ禍の急激な景気減速により、両指標は同時期に急低下し、足元では改善傾向にあります。海外経済の持ち直しにより、自動車などの生産活動や輸出が上向き、景気動向指数の構成指数の1つである鉱工業生産が大きく改善しています。一方、商品販売や求人などの内需関連指数の回復は引き続き弱く、当面は、生産活動を中心とした景気回復となりそうです。しかし、欧米での経済活動の再停滞懸念から、景気の先行きを左右する設備投資に企業は慎重なことから、今後の景気回復の足取りは鈍くなることも予想されます。

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