金融市場NOW

2020年米大統領選(7)
巻き返しを図るトランプ大統領

2020年07月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

支持率で劣勢のトランプ大統領 民主党地盤の州への選挙活動で挽回狙う

  • トランプ大統領はスイングステートでの劣勢挽回のため、民主党地盤の州への選挙活動を計画。
  • 新型コロナウイルス対策では有権者の不支持が多いものの、経済政策ではトランプ大統領に対する期待は高く、今秋に向けて雇用回復を伴う景気回復が再選のカギを握る。

支持率でバイデン氏リードを広げる

11月に控える大統領選の候補者2名の支持率(全米)の差が広がっています。全米で経済活動が再開された5月上旬以降、トランプ大統領の経済支援策などが評価され、バイデン氏との支持率の差は縮まっていましたが、直近では10ポイント近くまで広がっています。背景には、経済活動を早期に再開した南部の共和党知事の州を中心に、新型コロナウイルス感染が再拡大し、経済活動の再制限措置が採られたこと、人種差別抗議活動に対する一連の言動に批判が集まったと見られます。

トランプ陣営は、6月20日にオクラホマ州のタルサで集会を開催しました。6,000人以上が参加したことから、感染拡大の懸念があるとして開催前には批判の声が上がっていました。約2週間後となる7月6日、タルサ保健当局は1日として最多の261人の新規感染者数を発表しました。集会前の6月15日の76人から倍以上となったことから、集会での感染拡大が否定できないと当局担当者は発言しました。トランプ大統領の感染対策への姿勢に批判の声が上がっています。

トランプ陣営てこ入れに動く

2016年の選挙でトランプ氏勝利の原動力となったスイングステート(二大政党への支持が拮抗する州)において軒並み支持率が劣勢となっています(表1)。トランプ陣営はスイングステートでの劣勢を補うために、直近数回の選挙で民主党が勝利しているミネソタ州始めいくつかの州で積極的な選挙活動を計画している模様です。

トランプ陣営では、バイデン氏は国民からの熱狂的な支持を受けるにはまだ至っておらず、接戦に持ち込めば勝機は十分あると見られているようです。今回の選挙は再選を狙うトランプ大統領の「信任投票」の側面もあり、新型コロナウイルスの感染対策やそれに付随する経済支援策などの経済政策の運営への米国民の評価が選挙結果となって表れると見られています。

表1:主なスイングステートでの候補者支持率

  • ※支持率は各調査期間の平均値
  • 出所:Real Clear Politicsのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
州名 調査期間 トランプ バイデン
フロリダ州 2020/6/8~7/10 42.8% 48.0%
ペンシルベニア州 2020/6/8~7/2 42.0% 48.5%
オハイオ州 2020/5/8~6/22 44.7% 44.7%
ミシガン州 2020/6/8~6/28 40.5% 48.0%
ノースカロライナ州 2020/6/8~7/8 44.2% 47.5%
バージニア州 2020/3/25~5/17 40.0% 51.0%

トランプ大統領の経済政策への期待は高い

グラフ1:ISM非製造業景況感指数(主な構成指数)の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

直近の世論調査では、6割近い有権者が大統領の感染対策への不支持を表明している一方で、経済対策は感染拡大前と変わらず5割の有権者が支持を表明しています。また、経済政策への信頼という面では、バイデン氏よりも支持率が高い結果となりました。

良好な経済指標の結果を受けた足元の堅調な米国株式市場は、想定より順調な景気回復への期待が織り込まれていると思われます。一方で、6月のISM(全米供給管理協会)非製造業景況感指数では、景況指数など他の構成指数が良好な中で、国民の生活に直結する雇用指数のみ低調な結果となりました(図表2)。11月選挙まで3カ月余りとなる中、トランプ大統領再選のカギは雇用環境の改善を伴う力強い景気回復が握っていると思われます。

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