金融市場NOW

EU首脳会議で復興ファンドの設立に大枠合意

2020年04月30日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

今後欧州委員会が作成する詳細案に市場は注目

  • 4月23日に開催されたEU(欧州連合)首脳会議で1兆ユーロ規模の復興ファンドの設立が大枠で合意された。
  • イタリアやスペイン等の南部勢は返済が不要である助成金方式、ドイツやオランダ等の北部勢は返済が必要な貸付方式を主張。5月6日までに欧州委員会が原案を作成。

復興ファンドの設立について大枠で合意

4月23日開催されたEU首脳会議では1兆ユーロ規模の復興ファンド設立が大枠で合意されました。同日IHSマークイットが公表した4月のユーロ圏総合PMI(購買担当者指数:速報値)が13.5と過去最低を記録した3月の数値よりさらに悪化【グラフ1】したことも、合意を後押しした可能性がありそうです。EU首脳会議で方向性が確認されたことを好感し、株式市場は上昇しました【グラフ2】。

グラフ1:ユーロ圏及び主要国の総合PMIの推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:欧州主要国の株価推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

詳細は各国で意見が分かれ合意に至らず

実際の運用について各国の意見が分かれたため、詳細については今後に持ち越されることとなりました。新型コロナウイルスの大流行により大きな被害を受けた欧州各国【表1】において景気刺激策が求められています。特に感染者数、死亡者数ともに非常に多い欧州第三の経済大国であるイタリアは医療システムや損失を被る企業・国民に対する支援が必要と言われています。イタリアはもともとGDP(国内総生産)に対する財政赤字の比率が高く、財政出動余地が限られるため、EUに支援を求めていました。イタリア、スペイン等は返済が不要な助成金方式、ドイツ、オランダ等は返済が必要な融資方式を望んでおり、財政に余裕がある国と困窮している国との間の温度差が生じています。

表1:新型コロナウイルスの状況(4月24日9時)

  • (注)WHOに報告された人数
  • 出所:WHO(世界保健機関)のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
  感染者数 死亡者数 死亡率
ドイツ 148,046 5,094 3.4%
フランス 117,961 21,307 18.1%
イタリア 187,327 25,085 13.4%
スペイン 208,389 21,717 10.4%

欧州委員会が作成する詳細案に注目

今回のEU首脳会議の復興ファンドの大枠合意を受けて、5月6日までに欧州委員会が詳細な原案を作成することとなりました。1兆ユーロを助成金と融資に一定の比率で配分されることが想定されます。助成金は財政規律に優れるドイツ・オランダ等の北部勢から財政に苦しむイタリア・スペイン等の南部勢への実質的な所得移転とも考えられます。各国との調整を巡って、難しいかじ取りを強いられる欧州委員会が作成する案に注目が集まりそうです。

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