金融市場NOW

日銀短観(2020年3月調査)の概要

2020年04月03日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

新型コロナウイルスの影響から日銀短観は景気の先行きに不安を残す結果に

  • 日本銀行が発表した2020年3月の全国企業短期経済観測調査(短観、3月調査)において、大企業の業況判断指数(DI)は製造業・非製造業ともに悪化。先行きも回復の兆しは見えず。
  • 全体として2020年度の売上高、経常利益ともに2019年度から回復するとの予想だが、足元の新型コロナウイルスの影響を考慮するとやや楽観的。

大企業製造業・非製造業DIともに悪化

日本銀行が4月1日に発表した短観、3月調査は、新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、業況判断DIは大企業製造業・非製造業ともに大きく悪化しました。

大企業製造業のDIは、前回調査より8ポイント悪化したマイナス8(表1)となり、5期連続で悪化しました。製造業DIがマイナスを記録するのは、2013年3月調査以来、7年ぶりです。全業種で悪化しており、中でも造船・重機等や繊維の悪化が目立ちました。先行きは、大きく悪化した造船・重機等や繊維等が反動から上昇する見込みであるものの、新型コロナウイルスの影響により景気低迷が予想されることから、木材・木製品や鉄鋼等を中心に景況感の悪化が見込まれています。

大企業非製造業のDIはプラス8(表1)と前回調査から12ポイント悪化しました。物品賃貸や情報サービスの景況感が改善したものの、新型コロナウイルスにより海外からの旅行者が激減したこと等を受けて、宿泊・飲食や対個人サービスの景況感が大きく悪化しています。先行きについては、全業種で悪化が見込まれています。新型コロナウイルスに終息の兆しが見えないことから、非製造業は全般的に悲観的な見方を示しているようです。

表1:日銀短観業況判断DI(2020年3月)

(「良い」-「悪い」、ポイント)

  • (*1)2019年12月調査比
  • (*2)2020年3月(最近)比
  • 出所:日本銀行のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  2019年12月調査 2020年3月調査
最近 最近 先行き
  変化幅(*1)   変化幅(*2)
大企業 製造業 0 -8 -8 -11 -3
非製造業 20 8 -12 -1 -9
全産業 9 0 -9 -6 -6
中堅企業 製造業 1 -8 -9 -20 -12
非製造業 14 0 -14 -14 -14
全産業 9 -3 -12 -16 -13
中小企業 製造業 -9 -15 -6 -29 -14
非製造業 7 -1 -8 -19 -18
全産業 1 -7 -8 -23 -16

2020年度の売上高、経常利益予想は楽観的

2020年度は売上高が全規模・全産業で前年度比+0.1%、経常利益が同-2.5%の予想となっています。いずれも消費増税の影響等で2019年10~12月期のGDP(国内総生産)成長率が―7.1%(前期比・年率換算)と低迷した2019年度を上回る水準となっていますが、足元の新型コロナウイルスの影響等で厳しくなりつつある経済状況を考えるとやや楽観的な予想となっているものと思われます。3月調査には足元の状況が反映されていない可能性もあることから、収益が回復傾向にあるかどうかは6月調査を待つ必要がありそうです。

表2:売上高・経常利益予想(前年度比、3月調査)

単位:(%)

  • 出所:日本銀行のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  売上高 経常利益
2019年度 2020年度 2019年度 2020年度
大企業(全産業) -1.6 0.6 -8.7 -1.9
中堅企業(全産業) 1.2 0.5 -3.2 -4.3
中小企業(全産業) -0.5 -1.2 -7.5 -3.3
全規模合計(全産業) -0.7 0.1 -7.6 -2.5

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