金融市場NOW

ユーロ圏製造業の景況感の低迷は続く

2019年10月09日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米中貿易摩擦に端を発した輸出減少が響く

  • ユーロ圏製造業PMIは8ヵ月連続で好不況の境目と言われる50を割り込む。
  • ユーロ圏の鉱工業生産も前年同月比を下回る水準が続く。
  • 景気低迷を受けて、ECB(欧州中央銀行)は金融緩和を実施。金融緩和だけでは限界があるとの声もあり、財政政策の行方に注目が集まる。

ユーロ圏製造業PMIは50割れの水準が続く

グラフ1:ユーロ圏及び主要国の製造業PMIの推移

  • ※ユーロ圏:通貨ユーロを採用する19ヵ国
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ユーロ圏製造業の景況感に底打ちの兆しが見えません。英HISマークイットが10月1日に発表した9月のユーロ圏製造業PMI(購買担当者指数:改定値)は45.7と前月の47.0より1.3ポイント下落しました。2012年10月以来の低い水準となっており、ユーロ圏製造業の景況感がなかなか浮上してこないことが確認されました。好不況の境目を示す50を割り込むのは8ヵ月連続となります。長期化する米中貿易摩擦問題や混迷を極める英国のEU(欧州連合)離脱等が製造業の景況感低迷に影響しているようです。特に、ユーロ圏内の経済大国であるドイツの9月製造業PMIは41.7と前月の43.5より1.8ポイント悪化し、リーマンショック後の2009年4月以来の低水準となっており、ユーロ圏全体の景況感悪化の背景となっているものと思われます。一方で、サービス業PMIはユーロ圏もドイツも50を上回っており、製造業景況感の悪化が特に目立っています。

実体経済も景気低迷を示す

グラフ2:ユーロ圏及び主要国の鉱工業生産の推移

  • ※ユーロ圏:通貨ユーロを採用する19ヵ国
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

実体経済に目を向けると、ユーロ圏の鉱工業生産は2018年11月から9ヵ月連続で前年同月比でマイナスとなっています。こちらの指標もドイツの悪化が目立っており、2018年11月から前年同月比マイナスが継続しているうえに、直近3ヵ月は同4%を超えるマイナス幅となっています。ユーロ圏のGDP(国内総生産)の約3割を占めるドイツの景気が回復しない限り、欧州の景気回復も遠いものとなりそうです。

景気低迷を受けてECBは金融緩和を実施

インフレ率(物価)の安定が責務とされているECBは、インフレ率が目標に達していないことや、ユーロ圏経済の下振れリスクが高まってきたこと等から9月12日の金融政策理事会で政策金利の一つである預金ファシリティ金利(3つある政策金利の1つで金融機関がECBに預け入れる準備額の金利)を0.1%引き下げ、マイナス0.5%としました。併せて、2019年11月より月額200億ユーロの資産購入プログラムを再開させることも決定し、より一層緩和的な姿勢を示しました。しかし、金融政策だけでは限界があると言われています。現在、財政規律を重視するドイツでも財政出動のうわさが出てきており、財政政策がなければ製造業の景況感改善(景気回復)は困難ではないかと声も聞こえてきます。今後の財政政策の行方に注目が集まりそうです。

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