金融市場NOW

現職有利な米国大統領選だが支持率は懸念材料

2019年09月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米中通商交渉は長期化の様相も大統領再選を睨んで進展はあるのか

  • 米中貿易摩擦問題は報復措置の応酬となり、長期化の様相を呈している。長期政権が想定される習国家主席と再選を目指すトランプ大統領、両者の立場の違いが今後の交渉戦略に影響か。
  • 過去の大統領選では現職が有利だが、民主党各候補との支持率比較では劣勢のトランプ大統領。

米中貿易摩擦問題は長期化の様相

米国が8月1日に公表したほぼすべての中国製品に追加関税を課す(対中制裁第4弾)措置に対して、8月23日に中国は米国製品への報復関税措置を公表しました。この措置に対しトランプ大統領が、更なる中国への対抗措置を検討すると表明したことを受けて、米中貿易摩擦問題が長期化するとの懸念から、米国株式市場は大幅安となりました。

任期上限(2期10年)の撤廃によって2023年以降も国家主席に留まることが可能な習主席は、企業の借入コスト低下等につながる金利改革などの経済対策を講じており、合意を急がずに協議を継続していく姿勢であると想定されます。これは2020年秋に選挙を控え、有権者への実績を示す必要があると思われるトランプ大統領から有利な条件を引き出す戦略であると見られています。一方で、再選を目指すトランプ大統領は、日米貿易交渉で飼料用トウモロコシを日本が購入することで基本合意しました。これはトウモロコシの使用を低下させるバイオ燃料政策で、農家の支持率低下が伝えられる中、強力な支持基盤であり、中国による輸入農産物への追加関税で影響が予想される中西部の農家へ配慮を示したものと思われます。

過去の再選では現職大統領が有利

過去大統領が2期目を目指すケースでは、現職大統領が有利な結果が出ています。任期が2期8年に制限された1951年以降就任した11人の大統領(1期目途中で暗殺されたケネディ大統領を除く)で、再選に失敗したのは2名のみ(カーター、ブッシュ(父))です。また、選挙年の経済状況が勝敗を分ける要因と言われることがありますが、リセッション(景気後退)と選挙が重なったのはカーター大統領のみ(グラフ1)であり、必ずしも経済状況が選挙結果を左右すると言い切れないと思われます。仮に経済状況が有権者の投票行動に何らかの影響を与えるとしても、現在の米国経済は世界的に景況感が悪化し、先行き不透明感が漂う中でも、比較的堅調に推移しています。一方で、2020年11月の大統領選まで1年あまりとなる中、トランプ大統領の支持率は民主党各候補と比較して芳しいものではありません(グラフ2)。米中両首脳の出席が予想される11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)までに、トランプ大統領が米中通商交渉を好転させることができるのかに注目が集まると思われます。また、本格的に選挙戦がスタートする2020年3月のスーパーチューズデー(多く州で両党の予備選開催)時点の政策や、米国の景気動向などが、大統領の再選を占う上で最初のチェックポイントになると思われます。

グラフ1:米国の経済動向の推移

  • 出所:CEICおよび全米経済研究所データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:大統領と民主党各候補の支持率比較

  • 出所:Real Clearのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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