金融市場NOW

ドイツの景気回復は遅れ気味

2019年05月21日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ドイツが景気回復するまでECBは利上げを見送りか

  • IMFと欧州委員会は2019年、2020年のユーロ圏の景気見通しを相次いで下方修正。特に、ドイツが大きく下方修正されている。
  • ドイツは自動車排ガス規制等の影響で製造業が低迷している。欧州最大の経済大国であるドイツの景気が上向くまでは、ECB(欧州中央銀行)が利上げを行う可能性は低いと考えられる。

IMFと欧州委員会が景気見通しを下方修正

ユーロ圏の景気低迷が続いています。IMF(国際通貨基金)、欧州委員会は2019年に入り、ユーロ圏の成長率見通しを相次いで下方修正しました。欧州経済は低成長に苦しむ環境となっていますが、その中でも欧州最大の経済大国であるドイツの成長見通しが大きく下方修正されています【表1】。

表1:欧州経済及びドイツ経済の見通し

IMF見通し

(単位:%)

  18年11月時点 19年2月時点 19年5月時点
欧州 2019年 2.0 1.6 1.3
2020年 1.9 1.7 1.5
ドイツ 2019年 1.9 1.3 0.8
2020年 1.9 1.6 1.4

欧州委員会見通し

(単位:%)

  18年11月時点 19年2月時点 19年5月時点
欧州 2019年 1.9 1.3 1.2
2020年 1.7 1.6 1.5
ドイツ 2019年 1.8 1.1 0.5
2020年 1.7 1.7 1.5
  • 出所:IMF、欧州委員会のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ドイツ経済は2018年半ばより急速に悪化

グラフ1:世界各国の製造業PMI

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2018年半ばまでは各種経済指標も良好であり、欧州経済をけん引していたドイツ経済ですが、米中貿易摩擦激化による世界景気減速懸念の高まりや自動車の排ガス規制への対応等を受けて自動車産業が低迷しており、足元では欧州の成長率を下回る水準まで減速しているようです。2018年11月から2019年5月にかけて、IMFが1.9%から0.8%、欧州委員会が1.8%から0.5%といずれも1%超、ドイツの2019年の成長率を下方修正しました。そのような環境の下で、PMI(購買担当者景気指数)も悪化の一途をたどっています。グローバルで比較が可能なPMIを見てみると、ドイツの4月製造業PMIは50を大きく下回り44.4と、日本や中国よりも低い水準にあり【グラフ1】、ドイツ製造業のセンチメントが冷え込んでいることの証左と思われます。

ドイツ経済回復まで欧州の利上げは困難か

グラフ2:ドイツの自動車生産台数増減率

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ECBは2019年3月の理事会でユーロ圏経済は下方に傾斜しているとして、2019年夏以降としていた利上げ時期を2020年以降に先送りすることを決定しました。今後、景気が上向けば2020年に入ってから利上げに踏み切ると見られています。欧州の景気が上向くにはドイツ経済の回復が必要と思われますが、2018年夏以降ドイツの自家用車生産台数は前年の数値を下回るケースが多く【グラフ2】、ドイツの主要産業である自動車産業の回復には時間がかかりそうです。鉱工業生産等の一部の指標に改善の兆しが見えるものの、ドイツ経済の先行きが不透明な状況では、欧州の金融引き締めは当面の間、実施されないとの見方が市場では優勢となっています。

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。