金融市場NOW

ブレグジットと反EU政党に揺れる欧州議会選挙

2019年05月07日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ブレグジット(英国EU離脱)延期による英国の選挙参加で総議席数が変動

  • 5月23日より始まる欧州議会選挙にEU(欧州連合)離脱予定の英国の参加可能性が高まっている。
  • 獲得議席予想では穏健的な右派、左派に加え、両派どちらかの政治的な立場に属しながらも反EUや欧州懐疑派の立場をとる政党が議席を増やすとの予測も。

参加を前提に新党が結成される英国

グラフ1:欧州議会選挙予測(2019年4月18日発表)

  • ※英国が選挙に参加した場合(総議席数751)
  • 出所:欧州議会HP(2019年4月26日時点)および各種報道資料等をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

5月23日から始まる欧州議会選挙には、英国が参加する可能性が高まっています。選挙前日までに離脱協定案が可決されない場合には選挙に参加する必要があります。英国内で選挙への参加を見越して、立候補者のリストの公表や新党が結成される動きが出ています。強硬離脱派が結成したブレグジット党は、欧州懐疑派の政治的立場をとり、直近の世論調査では与党をしのぐ30%近い支持率を得ています。一方で、チェンジUK党はEU残留を公約とし、同じく親欧州的な立場をとる自由民主党や緑の党と連携を模索しています。今回の欧州議会選挙を「代理国民投票」とし残留を望む国民の声を自党の議席に反映させたい意向のようです。メイ首相は離脱法案を議会に提出できていない状況から、政府は選挙への参加を承認する方向です。

反EU・欧州懐疑派は勢力拡大か

英国が選挙へ不参加の場合には、議席総数は英国分の議席減少などで削減され705議席となる予定ですが、英国が参加する場合には751議席と現状維持となります。直近の予測(グラフ1)では、中道右派で現在第1党である欧州人民党が引き続き第1党を維持し、中道左派である欧州社会・進歩連盟が第2党とこれまでの予測から変動はありませんでした。一方で、報道機関やシンクタンクの調査では、右派や左派などの政治的立場に関わらず、反EU・欧州懐疑派の立場をとる政党が議席を伸ばすとされ、1/3程度の議席を確保するという予測もあります。イタリア与党『同盟』の党首サルビーニ副首相は、反EU・反移民を掲げる政党の結束を唱え新グループ結成を表明するなど勢力拡大を狙っています。また、これまで欧州人民党に所属していたハンガリー与党『フィデス・ハンガリー市民同盟』は反EU・反移民的な政治的立場を理由に同会派から資格停止処分を受けており、今後、新グループへの合流の可能性も指摘されています。ただし、反EU・欧州懐疑派的な立場をとる会派は右派・左派、EU予算への貢献姿勢、ロシアとの関係など政治的立場で相違点も多く、結束は困難との見方が大勢です。しかし、これまでドイツやフランスを中心にEU改革を進め、統合深化を目指してきた歴史に一石が投じられる状況も予想され、EU共通ルールにおいても各国の立場を考慮した措置やルール作りを求める動きも大きくなってくることが想定されます。各会派の選挙キャンペーンや選挙後のEU要職交代を巡る各国の駆け引きが活発となることが想定されます。

表1:欧州議会の主要会派と現保有議席数

  • 出所:欧州議会HP(2019年4月26日時点)および各種報道資料等をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
会派名 議席数 概要
欧州人民党(EPP) 217 最大会派で中道右派。ドイツCDU・CSU、フランス共和党、スペイン国民党などが所属。
欧州社会・進歩連盟(S&D) 186 中道左派の第2会派。ドイツ社会民主党、イタリア民主党、イギリス労働党などが所属。
欧州保守改革(ECR) 76 保守主義、欧州懐疑派、中道右派。イギリス保守党、ポーランド法と正義などが所属。
欧州自由民主連盟(ALDE) 68 中道主義会派、汎欧州主義派。ドイツ自由民主党、イギリス自由民主党などが所属。
自由と直接民主主義の欧州(EFDO) 41 反EU・反移民、極右やポピュリズム(大衆主義)政党など混在。イタリア五つ星運動などが所属。
国家と自由の欧州(ENF) 37 反EU・反移民、極右。フランス国民連合、イタリア同盟などが所属。

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