金融市場NOW

ユーロ圏の2019年経済成長見通しを引き下げ

2019年02月13日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

欧州の景気減速懸念は今年秋以降の金融政策へも影響か

  • ユーロ圏の経済見通しが引き下げられ、ドイツ・フランスなど主要国で景気減速が懸念される。
  • 米国で利上げサイクル早期終了観測が広がる中、欧州でも今年秋以降の利上げなしを市場は織り込み始めている。ECBにとって難しい政策判断を迫られる状況が続くか。

ドイツ・フランスなど経済見通しを下方修正

欧州委員会は2月7日、欧州の経済見通し(2019年冬版:2月)を公表し、2019年のユーロ圏の実質GDP(国内総生産)見通しを+1.3%と前回(2018年秋版:11月)から0.6ポイント下方修正しました。内訳を見ると、ユーロ圏で経済規模の大きいドイツ、フランス、イタリアなどが前回から下方修正され、ユーロ圏の景気減速が懸念されています。公表されたレポートによると高い不確実性のもとで緩やかな成長が続くとし、昨年末から続く米中の貿易摩擦などにより貿易量が減少する中、製造業の景況感が悪化していることが指摘されました。また、世界各国での政治的な混乱が下方リスクとして意識されていることにも言及されました。1日に公表されたユーロ圏の景況感を示す1月製造業PMI(購買担当者景気指数)は50.5(改定値)と2014年11月以来の低さとなり、好不況の境目である50に近づいてきました。また1月31日発表されたドイツの小売り売上高は実質ベースで前月比-4.3%となり、低下率は2007年以来11年ぶりの大幅悪化となりました。フランスにおいても燃料増税への反対から端を発した昨年末から続くデモが継続しており、政治的な不透明感が景気押し下げリスクとして意識されています。

表1:ユーロ圏主要国の経済成長率見通し

  • ※ユーロ圏:通貨ユーロを採用する19ヵ国
  • 出所:欧州委員会のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
国名 2019年 2020年
見通し 前回との差異 見通し 前回との差異
ユーロ圏 +1.3% -0.6 +1.6% -0.1
ドイツ +1.1% -0.7 +1.7% ±0.0
フランス +1.3% -0.3 +1.5% -0.1
イタリア +0.2% -1.0 +0.8% -0.5
スペイン +2.1% -0.1 +1.9% -0.1
オランダ +1.7% -0.7 +1.7% -0.1
オーストリア +1.6% -0.4 +1.6% -0.2

市場は今年の利上げなしを織り込みに

グラフ1:ユーロ圏のインフレ率と失業率

  • ※インフレ率:ECBが重視するエネルギー・食料・タバコ・アルコールを除く指数
  • ※ユーロ圏:通貨ユーロを採用する19ヵ国
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

1月の欧州中央銀行(ECB)定例理事会では金融政策の現状維持を決定しました。公表された声明文では、これまでと同様に今年夏が過ぎるまで金利を現状維持とし、秋以降の利上げの可能性を残す表現を維持しました。一部の市場参加者は今年10月に任期満了を迎えるドラギ総裁は利上げを行った上で、次期総裁に席を譲るとの見方もあるようですが、金利先物市場の状況から利上げ確率を算出すると、今年の利上げ回数は0回を織り込み始めています。また、米国においても1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、世界的な景気減速懸念等から、段階的な利上げ方針を修正し、今後の利上げを慎重に行う姿勢が強調され、利上げサイクルの早期終了が意識されています。ユーロ圏の雇用環境は良好でインフレ率は当局の目標(2%)に達していないものの、比較的安定していることから、すぐに利上げを必要とする状況ではない一方で、ECBとしては次の景気低迷期の景気刺激策として利下げ余地を残すため、金利を少しでも上げておきたいものと思われます。市場では今年の利上げなしの織り込みが進む中、ECBにとっては、難しい政策判断を迫られそうです。

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