金融市場NOW

ユーロ圏経済成長鈍化・域内景況感悪化

2018年11月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ECB(欧州中央銀行)の利上げ開始判断に影響を与える可能性も

  • 10月30日に発表されたユーロ圏の2018年7~9月期経済成長率、10月の景況感指数ともに、景気減速を示す内容となった。ユーロ圏を取り巻く環境の不透明感が増していることが要因か。
  • 米中貿易摩擦による影響も加わり、ユーロ圏の景気減速を示す経済指標の増加が続くことも考えられる。ECBの利上げ開始時期の判断に影響を与える可能性も。

約4年ぶりの水準に低下した経済成長率

グラフ1:ユーロ圏実質GDP成長率

出所:CEIC及びブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

EU(欧州連合)統計局が30日発表した2018年7~9月期のユーロ圏の実質GDP(国内総生産)は前期比・年率で+0.6%と、前期の同+1.8%から大きく減速しました。2013年4~6月期から22四半期連続でプラス成長を続けてはいるものの、成長率が1%を下回るのは約4年ぶりであり、ユーロ圏経済の減速傾向が明らかになりつつあります(グラフ1)。

景況感は10ヵ月連続低下

グラフ2:ユーロ圏景況感指数

出所:CEIC及びブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

欧州委員会が30日公表した10月の景況感指数は前月比-1.1ポイントの109.8ポイントとなりました。同指数は2017年12月に115.2ポイントと17年ぶりの水準まで上昇した後は、10月まで10ヵ月連続で低下を続けています(グラフ2)。

ユーロ圏を取り巻く環境の不透明感が増す

景気減速の背景には、ユーロ圏を取り巻く環境の不透明感が増していることがあるものと思われます。(1)米国とEUは7月に新たな貿易交渉入りで合意したものの、10月末時点でも本格的な交渉は開始されておらず、今後対立が激化するとの観測が出始めています。(2)英国のEU離脱に関しては、アイルランド国境問題等を巡って交渉が停滞しています。離脱後のEUとの関係について、英国が「合意なし」の状態で2019年3月の離脱を迎える懸念が強まりつつあります。(3)イタリアが提出した2019年度予算案が財政赤字を拡大させる等、EUの財政規律に反する内容となっていることから、欧州委員会とイタリアの対立がエスカレートし始めています。

ECBの金融政策に影響を与える可能性も

グラフ3:米国とドイツの10年国債金利

出所:CEIC及びブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

好調なユーロ圏経済等を受け、2018年1月に約2年半ぶりの高水準に上昇したドイツ10年国債金利は、景気減速や先行き不透明感等を背景に足元は低下傾向となっています(グラフ3)。ECB(欧州中央銀行)の金融政策を巡って、一部では早ければ2019年7月から利上げが開始されるとの見方があります。しかし、先行き不透明感が増している現在、景気減速を示す経済指標が更に増える可能性もあり、ECBの利上げ開始時期の判断に影響を与えることも考えられます。

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