金融市場NOW

高まる不確実性と身構える市場

2018年10月30日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

世界貿易の停滞観測等を背景に経済の不確実性が高まる

  • 世界の「経済政策不確実性指数」は2018年に入り上昇基調となっている。米中貿易摩擦の過熱や中東情勢を巡る懸念の高まり等が背景にあるものと思われる。
  • 好調さを持続してきた米国株価に変調の兆しが出始めている。追加関税に対する報復措置で世界貿易の停滞感が高まる等の事態に陥れば、米株価が一段と調整色を強めることも考えられる。

高まる世界経済の不確実性

世界経済の先行きに不確実性が高まっているようです。米経済学者らが算出する世界の「経済政策不確実性指数」は2018年9月時点で、2017年3月以来の高い水準となる247まで上昇しました。同指数は、トランプ氏が米大統領に就任した2017年1月の307をピークに、大幅減税により米景気や企業業績の拡大への安心感の強まり等を受けて低下傾向となっていました。しかし、2018年に入ると再び上昇基調へと変化し、足元はその勢いを強めつつあります(グラフ1)。

米中貿易摩擦の過熱化による中国経済の減速懸念、米国とイランとの関係悪化、米金利上昇等による新興国の通貨や株価の下落等を背景に、世界経済の先行き不透明感が強まったことが要因になっているものと考えます。10月に入り、イタリア予算案を巡る同国とEU(欧州連合)の対立激化、英国のEUからの離脱が「合意無き離脱」となる懸念等、更に不透明要因が増しており、世界の「経済政策不確実性指数」は9月より更に上昇している可能性があります。

好調さを持続してきた米企業業績や株価に変調の兆し

好調な経済や企業業績拡大期待等を背景に2016年以降上昇基調入りし、2018年1月をピークに一旦調整したものの、3月の底入れ後は再び上昇の勢いを取り戻した米株価ですが、10月に入り再び変調の兆しを見せ始めています(月末値ベース)(グラフ2)。世界経済の先行き不透明感の高まりから投資家心理が弱気に傾きかけている中で、大幅減税の効果等もあり大幅増益を続けて来た米企業業績に陰りが見え始めたこと等が影響しているものと思われます。2018年7~9月期の決算を発表した企業の中に、原材料費の上昇や中国での販売不振を理由に、2018年通期の業績見通しを下方修正するところも出始めています。

別名「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数(注)は足元急上昇しています(グラフ2)。トランプ政権の『米国第一主義』の政策により世界貿易の停滞感が強まる、英国のEUからの離脱が双方の合意の伴わない無秩序なものとなる等の事態に陥れば、世界の「経済政策不確実指数」は更に高まり、VIX指数の上昇等を嫌気して米株価が一段と調整色を強めることも考えられます。

  • VIX指数とはシカゴオプション取引所がS&P500種指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表している指数。一般的に、数値が高いほど投資家が先行きに対して不安を感じているとされ、別名「恐怖指数」とも呼ばれる。

グラフ1:世界の「経済政策不確実性指数」

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:米国株価とVIX指数

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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