金融市場NOW

名目賃金の伸び 21年5ヵ月ぶり高水準

2018年08月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

賃金は上昇するも消費はなお低空飛行

  • 6月の毎月勤労統計調査によれば、1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比で3.6%増加となった。
  • 好業績を背景に、企業が賞与を増やしたことが要因か。21年5ヵ月ぶりの高い伸び率。
  • 一方、1世帯当たりの消費支出は5ヵ月連続のマイナスとなっており、力強さを欠いている。

厚生労働省が8月7日に発表した6月の毎月勤労統計調査(速報値、常用労働者5人以上)によると、名目賃金に相当する労働者1人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)が44万8,919円と前年同月比で3.6%増加となりました。昨今の好業績を背景に、企業が賞与を増やしたためとみられており、日本の金融危機(1997~98年における一部証券会社や銀行等の経営破綻)前である1997年1月(6.2%)以来21年5カ月ぶりの高い伸び率でした。物価変動の影響を除いた実質ベースでみた場合も、伸び率は同2.8%増となりました(グラフ1)。

現金給与のうち、基本給にあたる所定内給与は5月に続き同1.3%増加の24万5,918円で、2カ月連続で1.3%以上の伸びとなるのは1997年6~7月以来となっています。大企業のみならず、中小企業でも20年ぶりの賃上げ率を記録しており、中小企業のベースアップ率は大企業を上回りました。賞与の支給額も同7.0%増加の18万3,308円となり、全体の押し上げ要因となりました。厚生労働省は、好業績により賞与の支給額そのものが増加したほか、企業が賞与の支給月を7月から6月に前倒ししたことも要因としてみており、賃金の動向を正確につかむためには引き続き7月の動きも注視する必要があるとしています。

一方、同時に総務省が7日に発表した6月の家計調査(2人以上世帯)によると、1世帯当たりの消費支出は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比1.2%減の26万7,641円となり、5カ月連続のマイナスとなりました(グラフ2)。全世帯の消費総額を示す6月の総消費動向指数は実質ベースで前年同月を0.7%上回り2017年3月からプラス成長が続いているものの、2017年10月以降の伸び率は0%台にとどまっています。給与は伸びているものの、消費の伸びは引き続き鈍いままとなっているようです。

グラフ1:賃金上昇率は21年5ヵ月ぶりの伸び

※名目賃金と実質賃金(前年同月比上昇率)の推移 出所:厚生労働省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:消費は力強さを欠いている

※1世帯当たりの実質消費支出の増減率の推移(前年同月比、変動調整値) 出所:総務省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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