金融市場NOW

トランプ大統領 G7首脳宣言を反故に

2018年06月13日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米国と他の6ヵ国の亀裂深まる

  • 6月8~9日のカナダで開かれたG7サミットは、米国と他の6ヵ国の亀裂の深さを印象付ける結果となった。採択された首脳宣言をトランプ大統領がひっくり返すという異例の事態に。
  • トランプ政権は今後、米国に流入する自動車への輸入関税検討を本格化させるものと見られる。欧州連合(EU)やカナダは7月から報復措置を発動する方針を表明している。貿易戦争の色彩が強まれば、マーケットが大きく混乱することも考えられる。

6月8~9日にカナダで開かれた主要7ヵ国(G7)首脳会議(シャルルボワ・サミット)は、保護主義的な政策を進める米国と、その撤回を迫る欧州やカナダ等他の6ヵ国との亀裂の深まりを印象付ける結果になったように思われます。同会議は、採択された首脳宣言をその3時間後に米朝首脳会談のために途中退席したトランプ大統領がツイッターに投稿して反故にするという、異例の事態となりました。議長国カナダのトルドー首相が記者会見で、米国が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をカナダや欧州に広げたことに対し、7月に報復関税を課すと表明したことがきっかけになったと見られています。今回の首脳会議では、日欧等が求める米政権の鉄鋼・アルミニウム輸入制限の撤回要求をトランプ大統領が受け入れ、G7の協調が保たれるかが一つの焦点でしたが、説得は不調に終わりました。トランプ政権は今後、米国に流入する自動車への輸入関税検討を本格化させるものと見られます。

トランプ政権は5月23日、安全保障を理由に輸入制限を課すことの出来る通商拡大法232条に基づき、自動車や同部品に追加関税を課す輸入制限の検討に入ることを発表しました。現行2.5%の乗用車関税に最大25%の追加関税を課す案等が出ているようです。調査が開始されてから実際に追加関税が発動されるまでには最低1年程度の時間がかかると見られており、最終的には発動されないケースも考えられます。しかし貿易戦争に発展すれば、世界経済や産業に大きなダメージを与え、世界的な株価の下落やドル安を招くことも考えられます。日本は1980年代の日米自動車摩擦等を背景に、米国内での現地生産の拡大に取り組んできました。1985年当時は300万台を超えていた米国向け輸出は2016年には170万台規模に減少し、また現地生産は400万台近くまで拡大しています(グラフ1)。日本側は同取り組み等を米国側に訴えかけていくものと思われますが、米国の自動車・同部品の対日赤字額は2017年時点で約53億ドルとメキシコに次いで2番目であり(グラフ2)、その改善要求は更に厳しくなりそうです。

欧州連合(EU)は6月6日の定例会議で米国が6月1日に発動した鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対抗措置として、米国からの輸入品に7月より報復関税を課す方針を決定しました。カナダも上記の通り7月に報復関税を課すと表明しました。また、足元では知的所有権問題を巡る米中の駆け引きが続いています。貿易摩擦悪化懸念は今後もマーケットの波乱材料となりそうです。

グラフ1:日本車の対米輸出・米現地生産台数

出所:日本自動車工業会のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:米国(自動車・同部品関連)貿易収支

出所:米商務省データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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