金融市場NOW

2017年度経常黒字 過去3番目の大きさ

2018年05月18日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

海外子会社からの受取り配当額等が黒字を支える

  • 2017年度の「経常収支」の黒字額は過去3番目の高水準を記録。世界的な景気拡大を背景とする海外子会社からの受取り配当額や「旅行収支」の増加等が黒字を支える。
  • 原油価格上昇等で「貿易収支」の悪化が懸念されるものの、海外子会社からの受取り配当額増等が予想され、2018年度の「経常収支」黒字が大きく減少する可能性は小さいと判断。

財務省が発表した2017年度の国際収支速報によると、日本が貿易や海外への投資等でどれだけ稼いだかを示す「経常収支」は前年度比3.4%増の21兆7,362億円の黒字となりました。2007年度の24兆3,376億円をピークに、原油輸入増等による貿易赤字の拡大で2013年度に2兆3,929億円まで減少した黒字額はその後は増加を続け、2017年度は過去3番目の水準を記録しています(グラフ1)。

「貿易収支」は4兆5,818億円の黒字ですが、原油価格の上昇による輸入額の増加を背景に、前年度比20.8%減少しています。日本企業の海外子会社からの受取り配当額等で構成される「第一次所得収支」は19兆9,105億円の黒字で、2017年度の「経常収支」黒字額全体の92%を占めています。世界的な景気拡大による海外子会社の好調な業績等を背景に、前年度比6.3%増加しています。2007年度の「経常収支」黒字に占める「第一次所得収支」黒字額の比率は68%でした。日本企業は潤沢な資金や国内市場の成熟化等を背景に海外展開を積極化させており、海外子会社からの受取り配当額等が「経常収支」の黒字を支える構造がより鮮明化しています。旅行や輸送といった取引の収支を示す「サービス収支」は6,029億円の赤字ですが、赤字額は過去最小となっています(グラフ1)。サービス収支の内、「旅行収支」は訪日観光客数の増加(2017年度は前年度比約500万人増の約3,000万人)により、過去最大の黒字額(1兆9,325億円)(グラフ2)となっています。

中東情勢の不安定化等により原油価格は騰勢を強めています。同輸入額の増加等により2018年度の「貿易収支」の黒字額が縮小することも考えられます。しかし、海外子会社からの受取り配当額等や旅行収支黒字額の増加は続くものと見ており、「経常収支」の黒字額が大きく減少する可能性は小さいものと思われます。

  • (1)輸出額から輸入額を引いた「貿易収支」、(2)親会社と子会社との間の配当・利子等の受取・支払額等の収支を示す「第一次所得収支」や、官民の無償資金協力等の収支を示す「第二次所得収支」、(3)主に訪日観光客が日本で使ったお金から日本の海外旅行者が外国で使ったお金を引いた「サービス収支」を合計した金額。

グラフ1:経常収支及びその内訳の推移

出所:財務省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:旅行収支と訪日観光客数の推移

出所:財務省とブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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