金融市場NOW

「生産緑地」維持へ

2017年09月14日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

宅地転用の加速を抑制か

  • 生産緑地の多くが2022年に期間満了を迎え、宅地転用が一気に加速することが懸念されている。
  • 農林水産省と国土交通省は生産緑地を貸借することに力を入れ始めている。
  • 生産緑地の貸借が可能になれば、後継者がいない農家も農地を維持する選択肢が広がるとみられる。

三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)の市街地にある農地が、一気に宅地に変わりかねない『2022年問題』が不動産市場において注目されています。都市部の農地『生産緑地』を維持するために、農林水産省と国土交通省が対策に乗り出すようです。生産緑地の多くは2022年に期間満了を迎え、宅地への転用が加速する恐れがあり、東京などでは今後、緑地の保全が課題となってきます。

現在の生産緑地は1992年に都市部に農地を残す目的で導入されました。地主には固定資産税などが大幅に軽減されている一方、30年間にわたって営農が義務付けられています。全国には約1万3,600ヘクタールあり、東京都で約3,300ヘクタールを占めています(グラフ1)。1992年以降、生産緑地以外の市街化区域農地の面積は宅地等への転用により減少傾向にありますが、生産緑地については概ね保全されています(グラフ2)。しかし、2022年には全体の約8割の農地が優遇期間である30年の期限を迎え、地主は利用を10年延長するか、市区町村に農地の買い取りを求めるか選択を迫られることになります。営農をあきらめる人が増加すれば、一気に宅地化が進む可能性も見込まれるため、東京などで住宅価格の急落などを懸念する声があるようです。

農林水産省と国土交通省の両省が今後力を入れていくのは、生産緑地の貸借です。企業やNPOに農地を貸し出すことで、地主の相続税の納税猶予の対象とするものです。これまでは貸借への国の支援がなく、営農をやめた場合は土地を売却するほかありませんでしたが、今後制度が改められて貸借が可能になれば、後継者がいない農家も農地を維持していく選択肢が広がるとみられます。農水省等は早ければ、9月下旬に開催予定の臨時国会に関連法案を提出し、年末の税制改革議論で必要な議論を求めたい意向のようです。

グラフ1:全国の生産緑地のうち約4分の1が東京都に存在

全国の生産緑地のうち約4分の1が東京都に存在
※生産緑地の都道府県別内訳(2014年3月31日時点) 出所:国土交通省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:生産緑地は約20年間概ね保全されている

生産緑地は約20年間概ね保全されている
生産緑地以外の市街化区域農地:各年度中の1月1日時点 生産緑地:各年度中の12月31日時点 ※市街化区域農地のデータは2013年まで 出所:国土交通省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。