金融市場NOW

2017年の路線価は2年連続上昇

2017年07月05日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

東京は4年連続上昇。大都市圏の上昇は地方都市にも波及

  • 都道府県庁所在都市の最高路線価は前年よりも2都市多い27都市で上昇。大都市圏の地価上昇が地方都市に波及。
  • 訪日客数増加によるホテル需要増、都内での大規模開発、地方での物流施設増加等が上昇をけん引。
  • 東京都心部の地価上昇には一服感も出始めており、2018年のオフィス大量供給等で上昇は沈静化に向かうとの見方も。

国税庁は3日、2017年分の路線価を発表しました。路線価は相続税や贈与税の算定基準となるもので、1月1日時点の標準価格を示します。路線価は全国平均で前年比+0.4%と、8年ぶりの上昇に転じた前年から2年連続の上昇となりました。都道府県別では、東京、愛知、大阪など13都道府県が上昇しています(表1)。32県では下落していますが、うち26県では下げ幅が縮小しています。

東京は前年比+3.2%と前年の上昇率(+2.9%)を上回っており(表1)、また、都内税務署管内ごとの最高路線価地点は4年連続で下落ゼロと好調が続いています。32年連続で日本一の東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前の価格は1m²当り4,032万円と、過去最高だったバブル直後(1992年)の3,650万円を上回りました。

都道府県庁所在都市の最高路線価をみると、上昇は27都市と前年より2都市増加。下落したのは3都市で、前年の5都市から減少しています。東京(前年比+26.0%)、名古屋(同+4.8)、大阪(同+15.7%)と大都市圏の地価上昇が続いていますが、札幌(同+17.9%)、金沢(同+14.9%)、仙台(同+14.1%)等その動きは地方都市にも波及しているようです(表2)。ネット通販の増加等による人手不足を補うため物流業界で最新鋭の設備を地方に新設する動きが加速していることや、訪日外国人客数増加等がけん引しているようです。

J-REITの物件取得が鈍化傾向となっています(2017年1~6月合計で約8,100億円、前年同期比約13%減)。その要因の一つに、価格高騰により利回り面等で投資採算に合う物件が減少していることが挙げられています。J-REITが業績を拡大させるためには、既保有物件の賃料引上げの他、新たな物件取得で資産規模を増やすことも求められます。今後地価上昇が沈静化に向かうこととなれば、J-REITの物件取得を後押しするものと考えます。尚、2018年の東京23区のオフィス大量供給により不動産市況が悪化するとの見方もあるようですが、今後の新築物件は建て替えが多く、供給量には既存ビルの取り崩しによる滅失面積が除かれていないことを考慮すると、需給が大きく崩れる可能性は小さいものとみています。2018年の経済状況によってはオフィスが不足する事態となることも考えられ、現時点で需給悪化を懸念するのは時期尚早と考えています。

表1:路線価の伸び率(全国、3大都市圏等):前年比

(%)

出所:国税庁データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
  2015年 2016年 2017年
全国 -0.4 0.2 0.4
東京都 2.1 2.9 3.2
愛知県 1.0 1.5 1.2
大阪府 0.5 1.0 1.2
福岡県 0.0 0.8 1.9

表2:県庁所在地(主要都市)の最高路線価の伸び率:前年比

(%)

出所:国税庁データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
都市名 最高路線価の所在地 2016年 2017年
札幌 中央区北五条西3丁目 11.8 17.9
仙台 青葉区中央1丁目 12.5 14.1
東京 中央区銀座5丁目 18.7 26.0
横浜 西区南幸1丁目 9.5 15.7
金沢 堀川新町 13.6 14.9
名古屋 中村区名駅1丁目 14.1 4.8
大阪 北区角田町御堂筋 22.1 15.7
京都 下京区四条通寺町 16.9 20.6
神戸 中央区三宮町1丁目 12.9 14.3
広島 中区胡町 12.2 11.3
福岡 中央区天神2丁目 12.0 12.5

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