金融市場NOW

個人投資家の存在感 低下

2017年06月23日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

個人投資家層の拡大には時間を要するか

  • 東京証券取引所が発表した2016年度の株式分布状況調査で、個人の保有比率が過去最低を更新。
  • 個人投資家の高齢化や現物株離れ等が要因か。近年は外国人投資家(外国法人等)の存在感が増す。
  • 外国人投資家は企業の資本効率を重視。今後、株主還元の拡充を求める声がいっそう強まりそう。

東京証券取引所(以下、東証)などが6月20日に発表した2016年度の株式分布状況調査によると、日本株の個人の保有比率(金額ベース)は3月末時点で前年度に比べて0.4ポイント少ない17.1%となり、1970年度の調査開始以来、過去最低を更新しました。一方で、外国人投資家の保有が再び増加し、年金資産などを預かる信託銀行の存在感も高まりつつあります(グラフ1)。

個人投資家の保有比率が低下していることの原因の1つとして、投資家層が高齢者に偏っているという「構造問題」があげられています。日本証券業協会によれば、個人投資家の過半数は60歳代以上となっており、「相続で両親から株式を譲り受けた子どもが納税のために売却する」というケースが多いようです。また、個人投資家の現物株離れもあり、近年は、企業分析が不要である上場投資信託(ETF)にお金が向かっているようです。金融庁や証券業界は少額投資非課税制度(NISA)などを導入し、若い世代に資産形成を目的とした長期運用を呼びかけているものの、個人投資家層の拡大にはまだ時間を要しそうです。

外国人投資家の保有比率は2015年度より0.3ポイント高い30.1%に上昇しました。株価水準の回復もあり、海外勢の日本株保有は174兆7,307億円と2015年度より13%増加しました。東証の集計によると、電気機器や海運業、精密機器等で海外勢の保有比率が上昇しました(グラフ2)。2016年11月に大胆な財政出動などの政策を掲げるトランプ氏が米大統領に当選したことで、日本市場でも景気敏感株を買う流れが主流となったようです。

外国人投資家は企業の資本効率を重視します。日本の自己資本利益率(ROE)は2016年度に8.7%と3年ぶりに上向いたものの、欧米の主要企業が10%を超えるのと比べれば見劣りします。日本企業の手元資金は積みあがっており、今後、外国人投資家から株主還元の拡充を求める声が強まりそうです。

グラフ1:日本株の個人の保有比率は低下傾向にある

日本株の個人の保有比率は低下傾向にある
※主要投資部門の日本株保有比率の推移 出所:東京証券取引所の資料を基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:景気敏感株を買う流れが主流になりつつある

景気敏感株を買う流れが主流になりつつある
※外国法人等の業種別保有比率状況(2015年度・2016年度) *東証33業種のうち、保有比率が上昇した上位5業種 出所:東京証券取引所の資料を基にニッセイアセットマネジメントが作成

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。