金融市場NOW

世界の社会的責任投資残高増加

2017年04月13日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

近年では個人投資家も関心を寄せる

  • 2016年の世界の社会的責任投資(SRI)の残高が22兆8,900億ドル(約2,500兆円)となった。
  • 残高拡大のけん引役は欧州の投資家。また今回の報告では、日本の急成長が目立つ。
  • 政府や公的年金の動き等から、民間の年金基金や運用会社の対応が求められるとみられ、今後の動向に注目。

世界持続的投資連合(GSIA)は、2016年の世界の社会的責任投資(SRI)の残高が、22兆8,900億ドル(約2,500兆円)と、2014年の前回調査に比べ25%増加したと発表しました。欧州や米国、日本でも残高が拡大し、近年は機関投資家のみならず、個人投資家のSRIへの関心も高まりつつあるようです(表1)。SRIは、資金使途を「環境」や「社会問題」に限定した債券や株式への投資を行もので、GSIAはSRIの普及を目的に啓蒙活動などを行う国際組織です。調査は欧州や米国、日本、カナダ、オーストラリアなどを対象に実施されました。

残高拡大をけん引したのは欧州の投資家です。2016年の保有残高は12兆400億ドルと、2014年比で12%増加、米国は8兆7,200億ドルで同33%伸びました。また、今回の報告において、日本の急成長が目立ちました。その背景の1つとして、2015年9月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名したことで、国内の運用会社が対応を迫られるようになり、日本において「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」という言葉が広がり始めたことがあげられます。

SRIの主な投資家は年金基金など機関投資家が中心ではあるものの、近年では個人投資家も関心を寄せているようです。欧州と米国、カナダを対象とする調査では2016年のSRI残高に占める個人投資家の保有割合は約26%となり、前回調査から約13ポイント伸びています。欧米においては、機関投資家を中心にSRIの市場規模が拡大しているものの、日本においては限定的であるのが現状です(グラフ2)。政府や公的年金の動き等から、SRIを取り入れる民間の年金基金や運用を受託する運用会社が増加する可能性もあり、今後の動向が注目されそうです。

表1:SRI残高は欧米を中心に増加

※1:残高の単位は10億
※2:投資比率は2016年の比率
出所:世界持続的投資連合(GSIA)を基にニッセイアセットマネジメントが作成
  SRI投資残高 運用資産に占める
SRI投資の比率
2016年 2014年
欧州 $12,040 $10,775 52.6%
米国 $8,723 $6,572 21.6%
カナダ $1,086 $729 37.8%
オーストラリア/
ニュージーランド
$516 $148 50.6%
アジア(除く日本) $52 $45 0.8%
日本 $474 $7 3.4%
合計 $22,890 $18,276 26.3%

グラフ1:近年SRI投信の残高と本数は横ばい

近年SRI投信の残高と本数は横ばい
※公募投資信託データ。SRIハイブリッド型投信の純資産残高は、SRI部分のみを算入しています。
出所:日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)を基にニッセイアセットマネジメントが作成

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