金融市場NOW

世界でも高額となった日本の医療費

2017年02月01日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

対GDP比 順位急上昇

  • 日本の保健医療支出(対GDP)がOECD加盟国(35ヵ国)中3位に。一気に順位が上昇。
  • 「福祉国家」と呼ばれるフランスやスウェーデンより上位となり、医療関係者の間で注目が集まる。
  • 高額薬の価格抑制や過剰投薬の防止など医療の「単価」と「量」の双方を抑える改革が必要か。

経済協力開発機構(OECD)がまとめた2015年の国内総生産(GDP)比の保健医療支出の推計値で、日本の順位が一気に上がり、米国、スイスに次いで3位となりました(表1)。これまで、厚生労働省や医療関係者は「低費用で上質なサービスを提供している」と主張してきており、その要因などに関心が集まりそうです。

近年はOECD加盟国中10位前後で推移していましたが、2015年の統計で急上昇しました。安価な公的医療保険制度が発達せず薬剤費なども高い米国の16.9%は別格とはいえ、「高福祉国家」と呼ばれるフランスやスウェーデンより上位となったため、一部の医療関係者などの間で話題になっているようです。

日本の医療費や介護費が伸びている要因の1つとして、高齢化の進展が挙げられます。医療費の対GDP比は2011年時点ではOECD35ヵ国中12番目でした。2015年までの間に65歳以上の人口比率は約7%増加しており、医療費などの拡大が順位の上昇につながったとみられています。また、2015年よりOECDの最新基準に合わせて「通所介護(デイサービス)」や「認知症向けの生活介護」などの介護関係の費用の一部が今回から新たに算入された影響も大きいようです。これにより6兆円ほど費用が膨らみ、GDP比が1%強も押し上げられました。

団塊世代が75歳以上になる2025年度に向けて、医療と介護の費用は経済成長のペースを超えて膨らみ続ける見通しです(グラフ1)。医療費の高騰は公費投入で国の財政を悪化させ、企業や個人が負担する保険料の引き上げにつながるため、高額薬の価格抑制や過剰な診療・投薬の防止など医療の「単価」と「量」の双方を抑える改革が必要不可欠であるとみられています。

表1:日本の医療費はOECD加盟国中、第3位

※比率は各国の保健医療支出の対GDP比。
※順位はOECD加盟国(35ヵ国)中の順位。
※()内の数字は2011年の順位。 出所:経済協力開発機構(OECD)のデータ、厚生労働省の資料を基にニッセイアセットマネジメントが作成
国名 2013年 2015年
比率 順位 比率 順位
米国 16.4 1位(1) 16.9 1位
スイス 11.1 3位(6) 11.5 2位
日本 10.2 8位(12) 11.2 3位
スウェーデン 11.0 4位(13) 11.1 5位
フランス 10.9 6位(3) 11.0 6位

グラフ1:医療・介護費用は伸び続ける見込み

医療・介護費用は伸び続ける見込み
※2011年6月における厚生労働省の見通し
出所:経済協力開発機構(OECD)のデータ、厚生労働省の資料を基にニッセイアセットマネジメントが作成

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