金融市場NOW

日本銀行の追加緩和とGPIFの基本ポートフォリオの変更について

2014年11月18日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

日本銀行の「量的・質的金融緩和」の拡大

2014年10月31日、日本銀行は、金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しました。資産購入の詳細については、下記の通りです。

日本銀行の「量的・質的金融緩和」の拡大

マネタリーベース増加額の拡大

マネタリーベースが、年間約80兆円(約10~20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を実施

長期国債買入額の拡大

保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れ

長期国債の平均残存期間を延長

買入れ対象の平均残存期間を7年~10年程度に延長(最大3年程度延長)

ETFおよびJ-REITの買入額の拡大

ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを実施。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に追加

追加緩和の理由として、日本銀行は、「消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いていること」をあげ、「やや長い目でみれば経済活動に好影響を与えるが、短期的には、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあり、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、量的・質的金融緩和を拡大することが適当と判断した」としています。

GPIFの基本ポートフォリオの変更と今後の動向

また、同日(10月31日)、国民の公的年金(厚生年金及び国民年金)の積立金の管理・運用を行う機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、基本ポートフォリオの変更を発表しました。 基本ポートフォリオの変更については、表・図1の通りですが、外国債券、国内株式、外国株式については、構成割合が増えることで、株価上昇や円安の傾向につながる可能性もあると思われます。一方、国内債券については、25%の構成比の減少となり、2014年6月末時点でのGPIFの運用資産額(127.26兆円)から試算すると、約31.8兆円※の潜在的な売り圧力になる可能性があると考えられます。

  • 127.26兆円×-25%=-31.8兆円(2014年6月末のGPIFの運用資産額と計画ベースの国内債券構成割合の減少分(-25%)から試算したものです。)

表・図1:GPIFの基本ポートフォリオの変更(中期計画)

  (1)変更前 2014年6月末 (2)変更後 変化
構成割合 構成割合 億円 構成割合 乖離幅 (2)-(1)
国内債券 60% 53.4% 679,102 35% ±10% -25%
国内株式 12% 17.3% 219,709 25% ±9% 13%
外国債券 11% 11.1% 140,726 15% ±4% 4%
外国株式 12% 16.0% 203,353 25% ±8% 13%
短期資産 5% 2.3% 29,737 0% -5%
合計 100% 100% 1,272,627 100% 0%
出所:ブルームバーグ、日本銀行、GPIFのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ1:日経平均株価とドル円の推移

出所:ブルームバーグ、日本銀行、GPIFのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

この国内債券の構成割合減少に対して、日本銀行による年間30兆円増による長期国債買取り額の拡大は、その潜在的売り圧力の軽減になるとの見方も出ています。
資産価格の上昇には、実体経済の好転をもたらす"資産効果"が期待できると思われることから、日本経済の好転への期待形成のモメンタムは維持されると見ています。
なお、米国では、10月28日、29日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で量的緩和第3弾(QE3)の終了が発表されましたが、その後株価は上昇傾向に、ドル円は円安傾向となりました(グラフ1)。
日銀の「量的・質的金融緩和の拡大」やGPIFによる「基本ポートフォリオの変更」はドル高円安の流れとともに株式市場へのプラスの効果が期待できるものと考えています。

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