金融市場NOW
IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(2014年10月)
2014年10月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
国際通貨基金(IMF)は10月7日、最新の世界経済見通し(WEO)を公表し、2014年、2015年の世界成長率予想を下方修正しました。その理由として、今後、地政学的緊張の高まりや金融市場の調整が生じることなどのリスク等があることを指摘しました。
IMFは、2014年の世界成長見通しを3.3%と7月時点の予想(3.4%)から0.1%引き下げ、2015年を3.8%と予想し、7月時点の予想(4.0%)から0.2%引き下げました。
先進国については、2014年を1.8%と7月時点の予想と変わらず、2015年を2.3%と7月時点の予想(2.4%)から0.1%引き下げました。新興国については、2014年を4.4%と7月時点の予想(4.3%)から0.1%引き下げ、2015年を5.0%と7月時点の予想(5.2%)から0.2%引き下げました。
ユーロ圏や日本、ブラジル、ロシアなどの国の成長見通しを下方修正した一方で、米国、インドなどは上方修正しました。
表:IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)
2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 見通し | 2015年 見通し | 2014年 (2014年 7月見通し との差異) | 2015年 (2014年 7月見通し との差異) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
世界 | 4.1 | 3.4 | 3.3 | 3.3 | 3.8 | -0.1 | -0.2 |
先進国 | 1.7 | 1.2 | 1.4 | 1.8 | 2.3 | 0.0 | -0.1 |
米国 | 1.6 | 2.3 | 2.2 | 2.2 | 3.1 | 0.5 | 0.0 |
ユーロ圏 | 1.6 | -0.7 | -0.4 | 0.8 | 1.3 | -0.3 | -0.2 |
ドイツ | 3.4 | 0.9 | 0.5 | 1.4 | 1.5 | -0.5 | -0.2 |
日本 | -0.5 | 1.5 | 1.5 | 0.9 | 0.8 | -0.7 | -0.2 |
オーストラリア | 2.6 | 3.6 | 2.3 | 2.8 | 2.9 | - | - |
新興国 | 6.2 | 5.1 | 4.7 | 4.4 | 5.0 | -0.1 | -0.2 |
アジア | 7.7 | 6.7 | 6.6 | 6.5 | 6.6 | 0.1 | 0.0 |
中国 | 9.3 | 7.7 | 7.7 | 7.4 | 7.1 | 0.0 | 0.0 |
インド※1 | 6.6 | 4.7 | 5.0 | 5.6 | 6.4 | 0.2 | 0.0 |
ASEAN-5※2 | 4.7 | 6.2 | 5.2 | 4.7 | 5.4 | 0.1 | -0.2 |
ロシア | 4.3 | 3.4 | 1.3 | 0.2 | 0.5 | 0.0 | -0.5 |
ブラジル | 2.7 | 1.0 | 2.5 | 0.3 | 1.4 | -1.0 | -0.6 |
メキシコ | 4.0 | 4.0 | 1.1 | 2.4 | 3.5 | 0.0 | 0.1 |
南アフリカ | 3.6 | 2.5 | 1.9 | 1.4 | 2.3 | -0.3 | -0.4 |
グラフ1:世界、先進国、新興国の成長見通し

今回の世界経済見通しで、IMFは「先進国では官民両部門の高い債務残高など、危機前からの後遺症がまだ景気回復に影を落としており、新興国は以前の好況時と危機後の回復時の水準よりも低い経済成長率に留まっています。先進国と新興国の双方で成長率の引き上げを引き続き優先する必要があります」とコメントしています。
IMFは、米国の2014年の成長見通しを2.2%(7月時点は1.7%)と大きく上方修正し、2015年は3.1%に加速するとしています。日本については、消費増税で個人消費が伸び悩んでることを考慮し、2014年を0.9%(7月時点は1.6%)に、2015年は0.8%(同1.0%)に引き下げました。新興国に関しては、ブラジルの2014年を0.3%(同1.3%)、2015年は1.4%(同2.0%)と大きく下方修正しました。中国は2014年が7.4%、2015年は7.1%と予想を据え置きました。
IMFは今回の発表で、世界経済の成長率改善のため、金融政策のみならず、各国の公共投資や構造改革等の実施を提言しています。
グラフ2:主要先進国の成長見通し

グラフ3:主要新興国の成長見通し

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