金融市場NOW
IMF(国際通貨基金) の世界経済見通し(2014年7月予想)
2014年07月29日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ばらつきが見られる世界経済の回復
7月24日、IMFは、世界経済見通しを改定しました。 2014年の世界の経済成長率見通しを3.7%(4月予想)から3.4%と0.3%下方修正しました。その理由として、2014年第1四半期の米国や中国など一部新興国の経済動向が4月の予想よりも弱かったことをあげています。
しかし、IMFは、来年はいくつかの先進国で予想以上の成長が期待されると予想しており、2015年の世界の経済成長率は4.0%と4月の予想を据え置きました。
表1:IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)
(単位:%)
2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 見通し | 2015年 見通し | 2014年 (2014年 4月見通し との差異) | 2015年 (2014年4月見通し との差異) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
世界 | 3.9 | 3.5 | 3.2 | 3.4 | 4.0 | -0.3 | 0.0 |
先進国 | 1.7 | 1.4 | 1.3 | 1.8 | 2.4 | -0.4 | 0.1 |
米国 | 1.8 | 2.8 | 1.9 | 1.7 | 3.0 | -1.1 | 0.1 |
ユーロ圏 | 1.6 | -0.7 | -0.4 | 1.1 | 1.5 | 0.0 | 0.1 |
ドイツ | 3.4 | 0.9 | 0.5 | 1.9 | 1.7 | 0.2 | 0.1 |
オーストラリア | 2.6 | 3.6 | 2.4 | 2.6 | 2.7 | - | - |
日本 | -0.5 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 1.1 | 0.3 | 0.1 |
新興国 | 6.3 | 5.1 | 4.7 | 4.6 | 5.2 | -0.2 | -0.1 |
中東欧 | 5.4 | 1.4 | 2.8 | 2.8 | 2.9 | 0.4 | 0.0 |
ロシア | 4.3 | 3.4 | 1.3 | 0.2 | 1.0 | -1.1 | -1.3 |
アジア | 7.9 | 6.7 | 6.6 | 6.4 | 6.7 | -0.2 | -0.1 |
中国 | 9.3 | 7.7 | 7.7 | 7.4 | 7.1 | -0.2 | -0.2 |
インド※1 | 6.6 | 4.7 | 5.0 | 5.4 | 6.4 | 0.0 | 0.0 |
ASEAN-5※2 | 4.5 | 6.2 | 5.2 | 4.6 | 5.6 | -0.4 | 0.2 |
中南米他 | 4.6 | 2.9 | 2.6 | 2.0 | 2.6 | -0.5 | -0.3 |
ブラジル | 2.7 | 1.0 | 2.5 | 1.3 | 2.0 | -0.6 | -0.6 |
メキシコ | 4.0 | 4.0 | 1.1 | 2.4 | 3.5 | -0.6 | 0.0 |
中東・北アフリカ他 | 3.9 | 4.9 | 2.5 | 3.1 | 4.8 | -0.2 | 0.2 |
サハラ以南アフリカ | 5.5 | 5.1 | 5.4 | 5.4 | 5.8 | 0.0 | 0.2 |
南アフリカ | 3.6 | 2.5 | 1.9 | 1.7 | 2.7 | -0.6 | 0.0 |
グラフ1:主要国の実質GDP成長率予想

先進国は、2014年は1.8%、2015年は2.4%と予想しています。
米国では、第1四半期の厳冬や在庫調整など一時的要因が弱まり景気回復が進んでいます。ただし、第1四半期の落ち込みを埋めるにはいたらないとみられ、2014年の成長率は1.7%、2015年には3.0%と予想しています。
ユーロ圏は力強さを増し、2014年は1.1%、2015年は1.5%と予想しています。しかし、一部の国ではいまだ民間・公的部門のバランスシートが毀損していることや失業率が高いことから、ユーロ圏の国々の経済成長にはばらつきが見られるとしています。
日本では、第1四半期の経済成長率が予想以上に力強かったことから、2014年は1.6%と予想しています。しかし、今後は財政刺激策の効果が薄らぐことから、2015年は1.1%と予想しています。
新興国は、2014年は4.6%と予想していますが、2015年は回復し、5.2%を予想しています。
中国では、政策当局より中小企業を対象とした減税、財政及びインフラ支出の加速化、並びに預金準備率の引き下げなどの政策が打ち出される予定であることから、それを反映して、2014年は7.4%、2015年は7.1%と予想しています。
インド経済は底を打ったと見られ、インドの選挙後、企業マインドが次第に回復し、経済は徐々に回復するとの見通しです。2014年度は5.4%、2015年度は6.4%と予想しています。
ブラジルは、金融引き締めにより企業景況感と消費者マインドが冷え込んでいることから、投資が抑制され消費の伸びが鈍くなっており、2014年は1.3%、2015年は2.0%と予想しています。
ロシアでは、地政学的リスクから投資がより長期にわたり弱い状況が続くだろうと想定し、2014年は0.2%、2015年は1.0%と予想しています。
総じて、現在の世界経済には、中東情勢やウクライナ情勢などの地政学的リスクにより原油などのエネルギー価格の上昇リスクや米国をはじめ長期金利の再上昇リスクがありますが、来年にはいくつかの先進国を中心に予想以上の成長が期待されると予想しています。
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