金融市場NOW

世界の株式市場、“デ・カップリング”の状況について

2014年05月20日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

先進国と新興国の"デ・カップリング"

グラフ1:先進国の株式指数、新興国の株式指数

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

昨年からの先進国の株式指数と新興国の株式指数をみると、2極化していることがわかります(グラフ1)。これを市場では、「デ・カップリング」(非連動)と呼んでいます。

先進国の株式指数の動きに新興国の株式指数が連動しなかった(デ・カップリング)理由は、米国の金融政策が量的緩和縮小に向かうにつれ、国際資金フローが変化し、新興国から資金流出を招いたこと等が挙げられています。

新興国の中での"デ・カップリング"

グラフ2:各国の消費者物価上昇率と経常収支/GDP比率

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

また、先進国の株式指数に連動しなかった新興国の中でも、"デ・カップリング"が生じています。 その理由は、新興国の中には海外からの投資マネーの資金流出が大きく、国内インフレの上昇、通貨安を被った国があったことなどが考えられます。

グラフ2で(A)の各国(ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカ、トルコ)は、消費者物価上昇率が高く、経常収支/GDP比率が赤字の国で、「フラジャイル・ファイブ」(脆弱な5ヵ国)と呼ばれることもあります。これらの国々は海外からの投資マネーの資金流出が大きく、国内インフレの上昇や通貨安を被ったため、政策金利の引き上げを実施してきたと思われる国です。各国の政策金利は、ブラジルは7.25%から11%(9回利上げ)、インドは7.25%から8%(3回利上げ)、インドネシアは5.75%から7.5%(5回利上げ)、南アフリカは5%から5.5%(1回利上げ)、トルコは翌日物借入金利が3.5%から一気に8%とそれぞれ引き上げられました(グラフ3)。

次に、「フラジャイル・ファイブ」の2012年12月末からの株式指数の推移をみてみると、南アフリカ、インド、インドネシアなどの国は、利上げにも関わらず株式市場が上昇(2012年12月末対比)しており、直近ではトルコ、ブラジルも上昇しています(グラフ4)。

グラフ3:各国の政策金利の推移

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ4:各国の株式指数の推移

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

「フラジャイル・ファイブ」の状況

これらの国々は、予防的に政策金利が引き上げられても、成長力は維持され、利上げにより相対的に高い金利水準がもたらされ、通貨安によって輸出競争力の向上も期待され、海外からの投資資金が流入しやすくなっているとも考えられます。
また、インドネシア、インド、ブラジルでは、今年の選挙を経て、政治面での安定感が構築されれば、海外からの投資マネーは還流し始めるかもしれません。
さらに、これまで、"予防的に"引き上げてきた政策金利を引き下げに転じた国には、海外投資マネーが流入する可能性があると思われます。政策金利を引き下げに転じたということは、「国内経済が安定的に回復してきたと金融当局が判断した」と思われるからです。

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