金融市場NOW

米国の金融政策が世界経済の“アンカー役”

2014年05月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

FOMC(4月29、30日開催)の内容とポイント

4月29、30日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、声明文が発表されました。今回の声明文は、前回(3月19日)の声明文から以下の文章に変更となりました。

1) March indicates that growth in economic activity has picked up recently, after having slowed sharply during the winter in part because of adverse weather conditions.

(3月の前回会合以降に入手した情報から、この冬の数カ月、悪天候の影響もあり減速した後、最近の経済活動は改善してきたことが示唆されました。)

そして、5月から、資産購入は100億ドルの減額とする方針を表明しました。

2) Beginning in May, the Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities at a pace of $20 billion per month rather than $25 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of $25 billion per month rather than $30 billion per month.

(5月より委員会は政府支援機関の住宅ローン担保証券の購入を毎月200億ドルと、従来の毎月250億ドルから減らし、期間が長めの米財務省証券については毎月250億ドルと、従来の毎月300億ドルから購入ペースを減速させます。)

今後の緩和政策の解除開始については、「最大限の雇用および2%のインフレという中長期的な目標と一致するバランスの取れたアプローチをし、雇用とインフレが目標水準に近づいた後でも、しばらくは、FF金利を中長期的に見て正常と捉える水準を下回る状態で維持する」とし、金融政策の変更については慎重なスタンスをとっています。

グラフ1:米マネタリーベースと米国金利

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

昨年12月のFOMCにおいて、FRB(米連邦準備制度理事会)による資産購入の減額が発表されてから、米国国債やMBS(住宅ローン担保証券)の金利は緩やかに上昇しています。一方、3月末のマネタリーベースは+1,684億ドル(昨年12月末比)と増加しています(グラフ1)。

グラフ2:米金融政策と失業率、インフレ率

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

また、FRBが注視している米失業率とPCEコア(個人消費支出コアデフレーター)(前年同月比)をみると、米失業率(4月)6.3%、PCEコア(3月)1.2%といずれも中長期的な目標水準(失業率:5.2~5.6%※1、PCEコア:2%)には、まだ達していないことから、FRBの量的緩和、ゼロ金利政策は慎重に持続されるものと考えられます(グラフ2)。

  • 1 FRBの政策当局者が完全雇用の推計として示している水準

FRBの金融政策の役割

グラフ3:米マネタリーベースと米国・中国・ロシア株式

出所:ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

FRBの量的緩和、ゼロ金利政策の持続により、マネタリーベースの増加は継続されています。過剰流動性の供給により、米国株式市場は上昇し、現在の世界経済のリスク要因と考えられる中国経済やウクライナ情勢で揺れるロシア経済等についても、下支えになっていると思われます(グラフ3)。

FRBは、慎重な金融スタンスを継続することで、今後も世界経済の"アンカー役"(下支え役)を果たしてくれるものと思われます。

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