金融市場NOW

貿易収支にみる今後の日本経済の動向について

2014年04月24日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

グラフ1:貿易収支、ドル円の推移

出所:ブルームバーグ、財務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

かつて日本は貿易立国の道を歩んでいました。 そのため、貿易摩擦もありました。1980年代には、不況に陥った米国が日本の貿易黒字をやり玉に挙げ、「原因は日本の輸入障壁」と主張し貿易不均衡是正が叫ばれました。そして、為替調整が行われ、1985年9月22日のプラザ合意後の円/ドルレートは、1ドル=235円台から1987年には1ドル=120円台と急激な円高となりました。 さて今般、日本の貿易収支は、赤字が定着しようとしており為替は円安傾向となっています(グラフ1)。

グラフ2:米国の政府債務、経常収支の推移

出所:ブルームバーグ、財務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

最近は、「貿易赤字は悪、黒字は善」という論調の記事をよく見かけるようになりました。たしかに、戦後の高度経済成長を支えてきたのは、製造業による加工品の輸出で得た貿易黒字であったと思われます。最近の貿易赤字は、日本の経済構造や海外要因等の変化による環境の変化によるものであると思われます。

米国には、「米国の双子の赤字(財政赤字、経常赤字)自体は大した問題ではない」との意見があります。「米国のような基軸通貨国は赤字でも海外からの資金調達に困ることはない」との理由です。たしかに米国は双子の赤字の状態でも、米ドルでの資金調達には困らないのかもしれません(グラフ2)。

グラフ3:日本の貿易収支(鉱物性燃料輸入額除き)の推移

出所:ブルームバーグ、財務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

一方、日本はどうでしょうか?日本は、米国のような基軸通貨国ではありませんが、日本の金融市場は国際比較でも十分大きな規模と流動性があると思われます。日本銀行による資金供給が問題なくなされ、金融機関の体力も回復しており、金融市場は安定していると考えられます。そして、貿易赤字を対外資産からの利息や配当(所得収支)で補える「成熟した債権国」であると思われます。

日本の貿易収支は、2011年から貿易赤字になりました。東日本大震災により、原子力発電が停止したことで、火力が中心となり、液化天然ガス等鉱物性燃料の輸入が増加し始めたことが主因と考えられます。鉱物性燃料の輸入額に注目し、貿易収支を分析してみた結果がグラフ3です。日本の貿易収支は、鉱物性燃料の輸入額を差し引けば、黒字であるともいえます。エネルギー供給が、原子力から火力中心のエネルギーに変化したことが貿易収支に大きな影響を与えたと思われます。

ここで注目されるのが、 "新エネルギー革命"です。第一段階は、低コストの米国のシェールガス等の輸入によるエネルギーコストの削減だと思われますが、本命は、成長戦略にも繋がる"新エネルギー革命"です。太陽光発電、地熱発電、風力発電、そして、バイオマス、太陽熱などの再生可能エネルギー等の開発等が政府の「新エネルギー基本計画」の中にも盛り込まれています。

新たなエネルギー等の導入が可能となれば、輸入構造も変化してくると思われ、日本経済にも大きなプラス要因になると思われます。

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