金融市場NOW

フィリップス曲線にみる日本経済の動向について

2014年01月22日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

日本のフィリップス曲線

グラフ1:フィリップス曲線(消費者物価上昇率と失業率)

出所:ブルームバーグ、財務省、内閣府のデータをもとに、ニッセイアセットマネジメントが作成

フィリップス曲線とは、1958年に英国の経済学者、アルバン・ウィリアム・フィリップスが論文で発表した考え方で、「インフレ率が高い時期は失業率が下がり、インフレ率が低い時期は失業率が上がる」という、インフレ率と失業率がトレード・オフの関係になるという仮説です。

アベノミクスは、このフィリップス曲線の考え方に基づいた政策とも思われます。安倍政権と日本銀行は、インフレ目標を2%とし、デフレ脱却を目指すとしています。フィリップス曲線の観点からは、「インフレ率を高くすることによって、失業率を低下させる」という政策であると考えられます。グラフ1において、アベノミクスの政策はグラフを右下にシフトさせる政策と考えられます(グラフ1)。

日本の3つの経済成長の局面

日本経済を長期的にみてみると、3つの局面に大別できると思われます(グラフ2、3)。

1971~1980年:高度成長、インフレ、失業率低位安定期

→株式市場・・・上昇相場/長期金利・・・高水準、横ばい

1981~1990年:中成長、ディス・インフレ、失業率低位安定期

→株式市場・・・上昇、行き過ぎ、急落/長期金利・・・低下

1991~2012年:低成長、デフレ、失業率上昇期

→株式市場・・・低水準、もみあい/長期金利・・・低水準、安定

グラフ2:消費者物価上昇率、実質GDP成長率、失業率の推移

出所:ブルームバーグ、財務省、内閣府のデータをもとに、ニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:日経平均株価と日本の長期金利の推移

出所:ブルームバーグ、財務省、内閣府のデータをもとに、ニッセイアセットマネジメントが作成

アベノミクスの実現性

さて、日本銀行による量的金融緩和、インフレ・ターゲット2%等がうまくいけば、デフレ脱却となり、雇用環境は改善し失業率は低下する(グラフ1では右下にシフト)と考えられます。そうなると、日経平均株価も低水準から相当程度上昇し、長期金利も時間をおいて緩やかに上昇すると考えられます。

但し、日本は長期のデフレ期を経験してきました。その後だけに、量的緩和政策の効果の持続性は不透明であると思われます。今後のフィリップス曲線の動向を注意深くみていきたいところです。

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。