金融市場NOW

“永遠の0(ゼロ)”の攻防、日米インフレ率格差にみる市場動向

2014年01月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米FRB(連邦準備制度理事会)は、昨年12月17、18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で、QE3(量的緩和第3弾)の縮小に踏み切りました。米国株式市場は、短期的には金融政策面での不透明感の払拭として受けとめ上昇しましたが、今回のFOMCの決定は、もう少し深い意味があったのではないかと思われます。

グラフ1:日米消費者物価上昇率の推移

出所:ブルームバーグ、FRB、米国商務省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

"永遠の0(ゼロ)"

現在、日米のインフレ率(消費者物価上昇率(前年比)とする)格差が0(ゼロ)の状況にあることにヒントがありそうです。

FOMCの声明文では、「失業率が6.5%を下回っても、インフレ率が委員会の2%という長期目標を下回り推移し続けることが予想されるときには、当面現在の目標金利を維持し続けることが適切」としつつ、FRBは量的緩和縮小を開始しました。このことからもインフレ率が長期目標の2%に達するまでは金融緩和を継続することにコミットしていると思われます。一方、日本銀行は物価水準2%を目標に掲げ、デフレ脱却を達成すべく金融緩和を継続しています。11月の日米のインフレ率は米国1.2%、日本1.5%と日米インフレ率格差は-0.3%となっています。1990年以降、この格差が最大に拡大してから縮小しほぼゼロおよび逆転した時期は、今回で4回目です(グラフ1、2、3)。

グラフ2:日米名目、実質金利差、インフレ率格差の推移

出所:ブルームバーグ、FRB、米国商務省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:ドル円、NYダウ、日経平均株価の推移

出所:ブルームバーグ、FRB、米国商務省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

過去の3回は以下のとおり。

1990年9月~1991年11月(14ヵ月)

日本ではバブル崩壊、世界的にはベルリンの壁崩壊から米ソの冷戦終了となり、日米ともにディスインフレへ。この期間、米国株式は底堅く推移しましたが、日本株式はバブル崩壊から急落し、ドル円は円高となりました。

1995年10月~1998年3月(2年5ヵ月)

ドル円は急激な円高(一時79円台)の後反転し、1998年8月には147円台の円安になりました。円安と同時にインフレ率は上昇、1997年4月には消費税率が3%から5%に引き上げられました。一方、米国はインフレ率が1%台まで低下。NYダウは安定的に上昇しましたが、日経平均株価はいってこいの展開になりました。

2007年11月~2009年4月(1年5ヵ月)

2008年のリーマン・ショックにより、日米ともにデフレの状況になりました。

今回は、日米インフレ率格差は2011年9月をピークに縮小し、格差縮小期間はこの1月で2年4ヵ月が経過しました。そして、1995年10月~1998年3月の時期と状況は似ています。1997年4月には消費税率が3%から5%に引き上げられましたが、今年4月には5%から8%に引き上げられます。日米インフレ率格差がほぼゼロの状況で、日本は量的緩和を継続する一方、米国は徐々に縮小していくと思われます。米国は米国内に還流した投資資金や世界のリスクマネーを米国株式市場にうまく取り込んでいくことも可能であると考えられます。そうすれば、米国景気は堅調に回復し、米国株式は安定的に上昇すると考えられます。

日米インフレ率格差、"永遠の0(ゼロ)"の攻防。やはり、最後は米国の勝利か?

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