金融市場NOW
資金循環統計にみる日本の家計金融資産残高の動向について
2013年10月24日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- 2013年第2四半期の部門別資金過不足を見ると、家計部門と民間非金融法人企業部門が資金余剰、一般府部門と海外部門が資金不足となっています。
- 家計金融資産残高は増加し、1,590兆円となりました。その内訳では、依然として現金・預金が多いものの、株式が、日本株式の上昇を受け増加しました。
- 家計金融資産残高と政府債務との関係では、家計金融資産残高が増加し両者の差が拡大しました。家計金融資産残高の増加が、"資産効果"として、個人消費等の増加につながり、今後の日本経済の下支えとなることを期待したいと思います。
2013年第2四半期の「資金循環統計」から、経済主体別の資金の流れを把握し、直近の日本経済の動きを捉えてみました。
2013年第2四半期の主要部門別資金過不足をみると、一般政府部門の資金不足額は-17.8兆円(GDP比率-3.5%)、海外部門は-1.3兆円(同-0.3%)、家計部門は+24.4兆円(同+4.8%)、民間非金融法人企業部門は+1.2兆円(同+0.2%)と財政赤字による政府部門の資金不足を民間部門(家計、民間非金融法人企業)が補う形となりました。(グラフ1)
グラフ1:部門別資金過不足

部門別資金過不足
日本銀行作成の「資金循環統計」の取引表において、各部門の資産から負債を控除した差額を、「資金過不足」といいます。その部門がその取引期間中に資金過剰だったのか、資金不足だったかが分かります。すべての実物取引には必ず金融取引がありますので、金融取引を把握することで実体経済の動きをつかむことができます。
グラフ2:家計金融資産の推移(内訳)

2013年第2四半期の家計金融資産残高は、2012年末から+46兆円増加し1,590兆円となりました。その内訳では、現金・預金が依然として多く、860兆円と全体の54%を占めています。また、株式は日本株式の上昇を受け、2012年末に比べ+19兆円の増加となりました。(グラフ2)
グラフ3:家計金融資産と政府債務の推移

家計金融資産残高と政府債務の関係では、家計金融資産残高が1,590兆円、政府債務が-1,009兆円と両者の差は+581兆円と、+547兆円(2012年末)よりも拡大しました。(グラフ3)
今後、一般政府部門では大幅な財政赤字、家計部門では高齢化による金融資産の取り崩しという抑制要因があるため、両者は接近すると予想されています。しかし、これまでのところ、アベノミクスが奏功する形で家計金融資産残高は増加しています。
家計金融資産残高の動向は、個人消費等の先行指標といわれています。家計金融資産残高の増加が、今後の日本経済の下支えとなることを期待したいと思います。
金融市場動向
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