金融市場NOW

米国株式の動向について(長期的な株価水準から考える)

2013年10月22日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ポイント

  • 今年の「ノーベル経済学賞」受賞者の一人、米国エール大学のロバート・シラー教授の「シラー式PER(株価収益率)」から、米国株式の長期的な株価水準を見てみましょう。
  • シラー式PERによれば、米国株式の株価水準は、長期的には、まだ「割高」な水準には達していないと考えられます。実質株価の上昇は、実質1株当たりの利益の増加を伴なっています。また、シラー式PERと米国長期金利の関係を見ると、米国長期金利及びシラー式PERは上昇する過程にあると見てとれます。

今年の「ノーベル経済学賞」受賞者の一人は、米国エール大学のロバート・シラー教授。今回の受賞の理由は、「資産価格の実証分析」で株や債券などの価格の長期的な傾向の分析での実績が評価されました。その他にも、シラー教授は、ベストセラー「投機バブル根拠なき熱狂―アメリカ株式市場、暴落の必然」の執筆者、S&Pケース・シラー住宅価格指数の開発者であることでも有名です。 ロバート・シラー教授が開発した指標の中で、「シラー式PER(株価収益率)」というのがあります。

PER(株価収益率)とは

会社の利益と株価の関係を表し、株価の割高・割安を図る指標。

PER=株価÷1株当たり利益

PERの算出において、1株当たり利益は、米国では単年度の実績を使われる時が多く、「実績PER」とも呼ばれています。しかし、PERの算出に使われる株価と1株当たり利益は、単年度ベースでは変動が大きく、PERが異常値となることもあります。そこで、シラー教授は、シラー式PERを開発しました。

シラー式PER(株価収益率)とは

シラー式PER = 実質株価÷実質1株当たり利益の10年平均

CAPE(Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)(景気循環調整後PER)といわれることもあります。

シラー式PERでは、株価や1株当たり利益を消費者物価指数で割って実質化し、さらに実質1株当たり利益は10年平均を使っています。米国のような経済成長率が安定している経済では、その方が株価水準を正しく判断できるようです。

グラフ1:米国株式(S&P500)とシラー式PER

出所:ブルームバーグ、ロバート・シラーHPのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

シラー式PERを用い、長期的な米国株式の株価水準を見ると、まだ「割高」な水準には達していないと考えられます。(グラフ1)。実質株価の上昇は、実質1株当たりの利益の増加を伴なっています(グラフ2)。また、シラー式PERと米国長期金利の関係を見ると、シラー式PERと米国長期金利が順相関のパターンに入ってきていると見て取れます。したがって、実質1株当たりの利益の増加を伴ないながら、米国株式が緩やかに上昇し、米国長期金利も上昇しながら、シラーPERは上昇する過程にあると見てとれます(グラフ3)。

グラフ2:実質株価、実質1株当たり利益の推移

出所:ブルームバーグ、ロバート・シラーHPのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:シラー式PERと米国長期金利の推移

出所:ブルームバーグ、ロバート・シラーHPのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

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