金融市場NOW
IMFの世界経済見通しについて(201年10月時点)
2013年10月11日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- 10月8日、IMF(国際通貨基金)は世界経済見通しを発表し、世界経済成長率を2013年+2.9%、2014年+3.6%と各々、前回の7月発表から-0.3%、-0.2%下方修正しました。先進国については、改訂はなかったものの、新興国は2013年+4.5%、2014年+5.1%と前回(7月)から-0.5%、-0.4%の下方修正となりました。
- 新興国の経済成長見通しの下方修正には、2つの理由があります。1つ目は、先進国の金利上昇や1次産品価格の下落、中国の成長鈍化が進みつつあることです。2つ目は、新興国、特に中国やインド等でみられるインフラ、労働市場、投資などの経済のボトルネックによる構造的要因です。
- しかし、新興国の成長率見通しは、2013年+4.5%、2014年+5.1%と依然高く、世界経済の成長エンジンであることには変わりはありません。先進国の財政・金融政策によるサポートと、新興国経済の回復により、世界経済の長期的、持続的な成長を期待したいところです。
10 月8日に改訂されたIMFの世界経済見通しについては、表1のとおりです。2013年の世界の成長率見通しは、+2.9%と前回(7月)に比べ-0.3%下方修正されました。また、2014年の見通しは、+3.6%と-0.2%下方修正されました。下方修正の主な要因は、新興国の2013年の成長率見通しが+4.5%と-0.5%下方修正、2014年の見通しが+5.1%と-0.4%下方修正されたことによります。
表1:IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)
(単位:%)
2011年 | 2012年 | 2013年 予想 | 2014年 予想 | 2013年 (7月予想時 との比較) | 2014年 (7月予想時 との比較) | |
---|---|---|---|---|---|---|
世界 | 3.9% | 3.2% | 2.9% | 3.6% | -0.3% | -0.2% |
先進国 | 1.7% | 1.5% | 1.2% | 2.0% | 0.0% | 0.0% |
米国 | 1.8% | 2.8% | 1.6% | 2.6% | -0.1% | -0.2% |
ユーロ圏 | 1.5% | -0.6% | -0.4% | 1.0% | 0.1% | 0.0% |
日本 | -0.6% | 2.0% | 2.0% | 1.2% | -0.1% | 0.1% |
新興国 | 6.2% | 4.9% | 4.5% | 5.1% | -0.5% | -0.4% |
ロシア | 4.3% | 3.4% | 1.5% | 3.0% | -1.0% | -0.3% |
中国 | 9.3% | 7.7% | 7.6% | 7.3% | -0.2% | -0.4% |
インド | 6.3% | 3.2% | 3.8% | 5.1% | -1.8% | -1.1% |
アセアン5 | 4.5% | 6.2% | 5.0% | 5.4% | -0.6% | -0.3% |
ブラジル | 2.7% | 0.9% | 2.5% | 2.5% | 0.0% | -0.7% |
メキシコ | 4.0% | 3.6% | 1.2% | 3.0% | -1.7% | -0.2% |
新興国のうち、成長率見通しの下方修正の幅が大きかった国をみてみますと、2013年は、インドが前回から-1.8%下方修正、メキシコが-1.7%の下方修正、ロシアが-1.0%の下方修正の幅と大きく、2014年については、インドが-1.1%下方修正、ブラジルが-0.7%下方修正と修正の幅が大きくなりました。
グラフ1:実質GDP成長率の推移

先進国については、潜在成長の確保と財政安定が 長期的な問題であるものの、超低金利政策の継続により、経済成長を維持し、米国を中心に緩やかに回復すると予想しています。 一方、新興国は、2つの問題に直面しているとみられます。1つ目は、先進国の金利上昇や1次産品価格の下落、中国の成長鈍化が進みつつあることです。今後、米国を始め先進国は、異例の金融緩和から徐々に金融引き締めに回帰してくるでしょう。
2つ目は、新興国、特に中国やインド等でみられるインフラ、労働市場、投資などの経済のボトルネックによる構造的要因です。高度経済成長はいつまでも続くものではなく、歴史的に見ても、経済成長が穏やかに均衡していくという「大収束」の過程は止まらないとの見方があります。
新興国の成長率見通しは、2013年+4.5%、2014年+5.1%と依然高く、世界経済の成長エンジンであることには変わりはありません。先進国の財政・金融政策によるサポートと、新興国経済の回復により、世界経済の長期的、持続的な成長を期待したいところです。
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