金融市場NOW

日本の賃金動向と企業活動について

2013年10月10日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ポイント

  • 10月1日に、政府から来年4月からの消費増税の実施が正式に発表され、同時に、5兆円規模の経済対策の策定が表明されました。今回の経済対策は、企業の設備投資や賃上げを促すことを主眼とし、「経済の好循環を作り出すこと」を意図しています。
  • 企業活動の現状は、"アベノミクス"により、大企業の経常利益は増加し現・預金は潤沢ではあるものの、中小企業はまだ好調だという水準ではありません。また、企業の人件費は、リーマン・ショック以降減少し、その後も抑えられている状況が継続しており、現金給与総額、実質賃金総額も増加しているとはいえません。今後、企業への減税等の経済政策の効果に期待したいところです。

10月1日に、来年4月から消費税率が8%に引き上げられることが政府から正式に発表されました。同時に、消費増税による景気への影響を最小限に抑え、日本経済のデフレ脱却を確かなものにするため、5兆円規模の経済対策の策定を表明しました。

今回の経済対策は、企業の設備投資や賃上げを促すことを主眼にしています。設備投資減税や、給与総額を一定比率以上増やした企業への減税拡大などを行ない、「経済の好循環を作り出すこと」を意図しています。(下図)

グラフ1:現金給与、定期給与、実質賃金総額(前年比)の推移

出所:ブルームバーグ、財務省、厚生労働省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

給与の現状を「毎月勤労統計調査」から見てみますと、2013年8月の現金給与総額(前年比)は-0.6%減少、定期給与は、-0.1%減少、実質賃金総額は、-1.6%減少となりました。(グラフ1)

「企業利益は順調に回復している」、「企業は潤沢な内部留保を持っている」といわれています。法人企業統計から、企業の経常利益、現・預金をみてみますと、確かに、大企業(資本金10億円以上)は、経常利益、現・預金共に増加していますが、中小企業(資本金2,000万円未満1,000万円以上)は、まだ経常利益が大きく増加しているとはいえず、現・預金も"潤沢"という水準には至っていない現状です。(グラフ2)

グラフ2:企業の経常利益、現・預金の推移

出所:ブルームバーグ、財務省、厚生労働省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:企業の人件費の推移

出所:ブルームバーグ、財務省、厚生労働省、総務省のデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

企業の人件費は、リーマン・ショック以降、減少の傾向にありました。その程度は、中小企業の方が大きかったといえます。(グラフ3)今後、企業への減税等の経済政策の効果に期待したいところです。

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