金融市場NOW

米国の財政問題、連邦債務の上限問題について

2013年10月04日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

今回の米国の財政の問題は、2つに分けられます。

米国の会計年度のスタートである10月1日までに、2014年度の暫定予算が成立せず、米国の政府機関の一部が閉鎖(シャットダウン)されたこと。
連邦債務の上限問題。

1.の一部政府機関の閉鎖について

ホワイトハウスのホームページによれば、米国民の生活には以下のような影響があるようです。

  • 1週間のシャットダウンによる経済損失は約100億ドル相当。
  • 250万人の高齢者向けのヘルシーな食事供給サービスが財源を失う。
  • 退役軍人の手当・年金・教育優遇策の財源が失われる。
  • 母親・年少児向けの必須栄養支援策が途切れる。
  • 労働者数十万人の政府職員が即時・無期限の一時帰休(無給)となる、等。

米国の調査機関の試算では、「2週間の政府機関閉鎖で2013年第4四半期の実質GDPを0.3%押し下げる程度」と今のところ影響は少ないとの見方が一般的です。

グラフ1:米国連邦債務上限と連邦債務の推移

出所:米財務省、ブルームバーグのデータより、ニッセイアセットマネジメントが作成

2.の連邦債務の上限問題について

現在の債務上限は16兆6,990億ドルです。(グラフ1)9月25日に、ルー財務長官が10月17日には資金が尽きるとの認識を示しました。このため、債務上限がそれまでに引き上げられないと米国債は利払いもできなくなり、デフォルト(債務不履行)に陥るとの懸念が噴出しました。
今回の議会での財政協議の争点は「オバマケア(医療制度改革)」です。共和党は「1年延期」を主張し、今回の状況を招いています。

10月17日までに、連邦債務の上限が引き上げられれば問題はないと思われます。また、引き上げられなくとも、米国国債のデフォルトまでは至らないと考えられます。その理由は以下の3点です。

1つ目は、デフォルトとなれば、ドル資産の信認を大きく傷つけ、世界の金融市場や米国経済が大きな混乱を引き起こします。それを政治的に引き起こしたとなれば、政府に対する米国国民の信任は大きく低下します。そして、共和党が原因だとすれば、次の中間選挙で共和党が大敗するリスクがあります。共和党が政治的にそこまでリスクをとるとは思いにくく、最後には折り合いがつく可能性があります。

2つ目は、オバマ大統領が米国憲法修正第14条第4項をもとに、必要な歳出に関して、債務上限に関わらず債券を発行してでも支払い行うことを認める可能性もあります。2011年の上限引き上げ論争の際に、財務省が検討した経緯がありますが、この時は、それ以前に政治的決着をみました。

グラフ2:米国連邦債務対GDP比率の推移

出所:米財務省、ブルームバーグのデータより、ニッセイアセットマネジメントが作成

3つ目は、債務上限引き上げに至らなくとも、新規の借金のできない緊縮(均衡)財政政策をとり、何らかの歳出カットによって利払い原資を確保すれば、「デフォルト」とはなりません。確かに、緊縮(均衡)財政は景気には引締め効果となり、短期的には、実質GDPにマイナス寄与となる可能性はあります。しかし、直近の米国の連邦債務対GDP比率は、2013年第2四半期、-4.2%の赤字と2009年第4四半期、の-10.1%の赤字と比べ、趨勢的にかなり改善している過程です。(グラフ2)

現在の米国経済の成長要素とも言えるシェールガス革命、住宅市場の回復、ビックデータ革命などを考慮すると、一時的な要因のようにも考えられます。

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