金融市場NOW

9月のFOMCと今後の米国金融政策について

2013年09月25日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ポイント

  • 9月17、18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の市場予想に反し、FRB(米連邦準備制度理事会)はQE3(量的緩和第3弾)縮小を見送りました。
  • "現状維持"とした主な理由は、「米国経済の復調になお不確実性が残る」という理由です。FRBは、直近の金利上昇には注視しています。住宅ローン金利や自動車ローン金利の上昇が実体経済に影響し、消費、雇用、設備や住宅投資の妨げになることも考えられます。
  • 今後、米国経済が巡航速度で回復し、それに従い市場金利が緩やかに上昇する過程で、FRBは金利上昇の実体経済に対する影響を確認しながら、「出口戦略」を進める方針であると考えられます。

9月17、18日のFOMCでは、大方の市場予想に反し、FRBはQE3縮小を見送りました。 声明文によれば、「米国経済の復調に、なお不確実性が残る」ことを"現状維持"の主な理由にあげています。そして、「依然として残る米国経済のリスク」として、1.失業率が依然として高いこと、2.住宅ローン金利が上昇したことと財政政策が経済と労働市場の改善ペースを鈍らせるリスクがあること、3.現在のインフレ率は目標である2%を恒常的に下回っており、それが経済にとってリスクになりえること等をあげています。

グラフ1:米国金利の推移

出所:FRB、MBA、ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

FRBは、直近の金利上昇には注視しています。(グラフ1)住宅部門と自動車産業は、これまでの金融緩和により恩恵を受けてきたチャネルです。直近の住宅ローン金利や自動車ローン金利の上昇により、住宅や自動車の販売が減少するリスクがあります。そして、金利上昇が消費、雇用、設備や住宅投資の妨げになることも考えられます。(グラフ2、3)

グラフ2:米住宅ローン申請指数と住宅ローン金利の推移

出所:FRB、MBA、ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:米自動車販売台数と自動車ローン金利の推移

出所:FRB、MBA、ブルームバーグのデータよりニッセイアセットマネジメントが作成

さらに、10月半ばには米国連邦予算の政府債務が上限の16兆7千億ドルを超える、いわゆる「財政の崖」問題に再び直面するという見通しやローレンス・サマーズ氏がFRB議長候補を辞退したことなどから、「FRBが来年1月に行われる議長交代まで量的緩和縮小を実施しづらくなった」との見方が浮上してきています。

今回のFOMCにおける決定は、量的緩和政策からの「出口戦略」の難しさとともに"市場との対話"の難しさを感じさせました。今後につきましては、「実体経済のデータを注視しながら判断していく」というFRBの方針のとおり、米国経済が巡航速度で回復し、それに従い市場金利が緩やかに上昇する過程で、FRBは金利上昇の実体経済に対する影響を確認しながら、「出口戦略」を進める方針であると考えられます。

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