金融市場NOW
日本の消費増税および米国の量的緩和縮小について
2013年09月04日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- 9月からの市場の大きな注目材料は、1)日本の消費税率引上げ、2)米FRB(連邦準備制度理事会)のQE3(量的緩和第3弾)縮小開始 、が決定されるかどうかです。
- 過去の消費増税時の日本株式の動向や、QE終了時の米国株式の動向を見てみると、市場への織り込み度合いは様々です。日本ではアベノミクスによる"異次元"の量的緩和が継続していることや米国では個人消費や住宅投資が回復していることなどから、今回は、日米両国が財政政策と金融政策のバランスを保ちながら、景気回復への足取りを固めていく過程にあると思われます。
9月には、世界の投資家が夏のバカンスを終え、市場に戻ってきます。市場は、1)日本の消費税率引上げ、2)米FRB(連邦準備制度理事会)のQE3(量的緩和第3弾) 縮小開始、に注目しています。政府は消費税増税については、10月1日に発表される日銀短観(全国企業短期経済観測調査)などを踏まえ、10月上旬に判断するとしています。また、米国では、9月17、18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、QE3縮小が決定されるかどうかが注目されています。
過去の消費増税実施時期とその後の日経平均株価の騰落率は、以下の表A、Bとグラフ1をご参照ください。
消費税が導入された1989年は、いわゆるバブル相場が終焉を迎えた年で、12月に天井を打ち、その後、1993年11月まで57.8%下落しました。また、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年は、6月に天井を打ち、その後、1999年9月まで18.7%下落しました。表A:過去の消費増税実施時期
首相 | 年月 | 消費税関係 |
---|---|---|
竹下 登 | 1989年 4月 | 消費税法を施行。税率は3% |
橋本 龍太郎 | 1997年 4月 | 消費税率を5%に引き上げ |
野田佳彦 | 2012年 8月 | 消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる法案が8月10日、参院本会議で可決成立 |
表B:消費増税実施と日経平均の期間騰落率
高値 | 安値 | 安値 | |
---|---|---|---|
日付 | 1989年12月 | 1993年11月 | - |
株価 | 38,915円 | 16,406円 | -57.8% |
日付 | 1997年6月 | 1999年9月 | - |
株価 | 20,681円 | 16,821円 | -18.7% |
グラフ1:消費増税と日本株式、金利の動向

米国では、9月17、18日のFOMCでQE3の縮小が決定されることが予想されています。過去2回のQE終了時の株式市場の動きをみると(表C)、QE1終了時は13.1%の下落、QE2終了時は16.8%の下落となっています。注目すべきは、株価指数の安値のタイミングです。QE1終了時は、ほぼ終了と同時で市場には織り込み済みとなりました。QE2終了時は、終了からほぼ3か月後に安値を付ける形となりました。今回、FRBの意図は、QEは段階的に縮小の方向であることと、超低金利を継続することを市場とコミュニケーションをとりながら市場に浸透させることにあると考えられます。米国の経済指標を確認しながら、また、新興国市場を含め金融市場動向に配慮しながらの決定になると考えられます。
表C:QE1、2とNYダウの期間騰落率
QE実施中 高値 | QE終了後 安値 | NYダウ 期間騰落率 | |
---|---|---|---|
QE1 | 2010年4月 | 2010年7月 | - |
株価 | 11,205ドル | 9,732ドル | -13.1% |
QE2 | 2011年4月 | 2011年10月 | - |
株価 | 12,810ドル | 10,655ドル | -16.8% |
グラフ2:日米マネタリーベースと日米の株価指数の推移

日本経済がアベノミクスによる異次元の"量的緩和"の継続により徐々に景気が回復していること、米国経済も好調な個人消費や住宅投資が下支えとなり、回復していることから、日米両国は財政と金融政策のバランスを保ちながら、回復への足取りを固めていく過程にあると思われます。
金融市場動向
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