金融市場NOW
“流動性のわな”と“量的緩和政策”について
2013年08月22日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ポイント
- アベノミクス以前の日本経済は、"流動性のわな"に陥っている、と言われていました。短期金利の水準は、"ゼロ金利"の水準にあり、これ以上の金利操作による効果が見込めない状況でした。
- アベノミクスは、第1の矢(量的緩和)、第2の矢(財政政策)により、株式市場の上昇やドル高といった市場の"期待形成"を実現しました。
- アベノミクスによる景気回復を持続的なものとするためには、1)第3の矢である"成長戦略"により構造転換を試み新たな経済成長の種を増やすこと、2)"量的緩和"によるマネタリーベースをさらに拡大させること、などがあると考えられます。
アベノミクス以前の日本経済は、"流動性のわな"に陥っている、と言われていました。日本銀行は、政策金利の操作を行うことで、貨幣供給量をコントロールし、「物価の安定」を図ってきました。
しかし、1996年以降、短期金利(コールレート)はほぼ"ゼロ金利"水準にあり、これ以上の政策金利の操作による効果が見込めない"流動性のわな"の状況でした。グラフ1:実質貨幣残高と短期金利の関係


「流動性のわな」とは
金利が低水準で、中央銀行が資金供給を行っても、金利がこれ以上下がらない状態のこと。
左図Aは、"流動性のわな"を簡単に説明するためのイメージ図です。金融当局がいかに資金供給をしても、金利は下がりません。実際に実質貨幣残高と短期金利の関係を見たのが上図のグラフ1です。
左図B は、アベノミクスの第1の矢、第2の矢を表しています。(イメージ図)。第1の矢の"量的緩和"政策でLM1→LM2、第2の矢の"財政政策"でIS1→IS2を行い、総所得(総需要)を喚起しました。グラフ2:日本のマネタリーベースと株式指数の推移

日本銀行の"量的緩和"政策は今回だけではありません。前回は、2001年3月から2006年3月まで行われましたが、2000年からのITバブル崩壊の影響で思うように景気は回復しませんでした。(グラフ2)
グラフ3:日米のマネタリーベースの推移

アベノミクスによる景気回復を持続的なものとするためには、1)第3の矢である"成長戦略"により新たな経済成長の種を増やすこと、2) "量的緩和"によりマネタリーベースをさらに拡大させること、などがあると考えられます。米国は量的緩和政策(QE1~QE3)により開始当初(2008年)の3.9倍の貨幣供給を行っています。(グラフ3)
金融市場動向
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